ハロゲン化鉛系ペロブスカイト太陽電池は近年エネルギー変換効率が急速に向上し、20%を超えた例も報告されている。一方で、界面構造が不均一であることから、その動作原理には未だ不明な点が多い。本年度は、混合ハロゲン型ペロブスカイトにおける電荷移動ダイナミクスの解析とメカニズム解明に注力して研究を進めた。ハロゲン交換反応によって合成したBr-I混合ハロゲン型ペロブスカイトの蛍光寿命測定を行った。その結果、電荷の捕捉や初期の電荷再結合に帰属される1ナノ秒以内の速い減衰成分に加え、数ナノ秒から数十ナノ秒の時定数の立ち上がり成分が観測された。Iを含むペロブスカイト層は数マイクロメートルサイズの結晶のごく表面近傍にのみ存在することから、観測された立ち上がり時間は、内部のBr体で生成した電荷が表面まで拡散するまでにかかる時間であると推測される。また、立ち上がりの時定数は、励起レーザー強度の増加に伴い、徐々に大きくなった。さらに、レーザーのパルス間隔を長くすると、立ち上がり成分が徐々に消失した。これは過渡的な捕捉電荷が電荷移動ダイナミクスに関与していることを示唆している。実験結果を説明するため、一次元拡散モデルに基づくシミュレーションを行った。その結果、表面に捕捉された正孔が生成するバンド曲がりが重要な役割を果たしていることが明らかになった。その他、関連するテーマについて研究を進め、得られた成果を関連学会において発表した。
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