研究実績の概要 |
本研究課題では、高周期典型元素の特性を熟知した上で、特に高周期14族元素二価化学種および多重結合化学種の性質を活用した精密な分子設計により、これまで遷移金属元素でしか為しえなかった、あるいは遷移金属元素でも為しえない有用な有機合成反応の開発を目的とする。最終的には「典型元素触媒」の開発を目指しているが、まずはその基盤となる小分子の変換、多成分連結反応を基本として詳細に検討することとした。 本年度は、既報の安定なゲルマニウム間二重結合・三重結合を活用したエチレンおよびアセチレンの修飾を検討することとし、かさ高い置換基を有する安定なジゲルミン(ゲルマニウム間三重結合化合物)とエチレンおよびアセチレンとの反応を検討した。立体保護基としてBbt基(2,6-[CH(SiMe3)2]2-4-[C(SiMe3)3]-C6H2)を有するジゲルミンに対してエチレンを作用させたところ、速やかに[2+2]付加環化反応が進行し、対応する1,2-ジゲルマシクロブテンが得られた。これに対し、さらに種々のアルケンを反応させることにより、Ge=Geが開裂した付加生成物などが得られた。一方、Tbb基(2,6-[CH(SiMe3)2]2-4-t-Bu-phenyl)を有するジゲルミンに対し、アセチレンを作用させたところ、二分子のアセチレンとの反応が速やかに進行し、[2+2+2]付加環化生成物である、1,2-ジゲルマベンゼンが安定な黄色結晶として得られた。これはすなわち、ジゲルミンを基盤としたC-C結合形成反応と言える。
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