研究課題/領域番号 |
15H03779
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 直 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70311769)
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研究分担者 |
福原 学 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30505996)
西嶋 政樹 大阪大学, 産学連携本部, 助教 (70448017)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光化学 / 有機化学 / エキシプレックス / 励起CT錯体 / 不斉反応 / 励起状態相互作用 / 光環化反応 / キラルルイス酸 |
研究実績の概要 |
電子受容体と電子供与体の関与する光反応において、一般的には励起状態で形成されるエキシプレックスが鍵となり、その反応の選択性、特に立体選択性が決定される。しかしながら、エキシプレックスをはじめとする励起種は短寿命であり、その精密制御は未だ困難な状況にある。申請者は、基底状態での相互作用、特に電荷移動(CT)相互作用を活用し、その吸収帯の選択的光励起によって生じる励起CT錯体を、不斉光反応の新しい制御法として活用するべく、様々な検討を進めてきた。本方法論によれば、基底状態での相互作用を活用可能であるため、エキシプレックスとは異なる立体選択性が期待でき、また、一般論としては選択性の制御も容易となると期待される。このような方法で、多様で複雑な骨格形成を得意とする光反応、特にキラル光反応の応用可能性を広げることが本研究の目的である。 本年度は、エキシプレックス形成において、その電子的状態を変えることなく、立体制御をリモート位で行うような系についてを中心に検討を進め、光物理化学過程の分光学的検討とともに、反応制御に最も効果的な置換位置の特定と、その立体制御効果の実証実験を進めた。 本年度は、当初課題に関してはおおむね予定通り順調に研究が進んだだけでなく、関連する発展的研究も飛躍的に展開できたため、J. Am. Chem. Soc.誌、J. Phys. Chem. Lett.誌を含む合計15報の研究論文を発表したほか、国際学会での招待講演などを通じ新しい国際的共同研究に発展する結果となった。とくに、本研究で得られた知見と、ミュンヘン工科大学における合成化学的な光不斉反応に関しての共同研究は、現在初期的な検討段階ではあるが、国際共同強化研究として発展的に進めるための基盤を得ることができたといえる。今後もさらに大きく研究を展開できるものと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は研究の2年度目であったが、キラル化合物の物性、基底状態、励起状態の相互作用に関連する成果として、業績欄に記載の通り当初予想をはるかに上回る成果を上げることができ、J. Am. Chem. Soc.誌、J. Phys. Chem. Lett.誌を含む合計15報の研究論文を発表したほか、J. Photochem. Photobiol. A誌のゲストエディターとして特集号を編纂、発刊することができた。また、日本化学会の関連分野の特別企画の企画責任者を務めたほか、有機合成化学協会誌に日本語の解説記事を寄稿するなど、アウトリーチ活動にも努めた。また、これらの発展的成果が評価され、国際共同強化研究としてミュンヘン工科大学との共同研究へ展開する足掛かりを得るなど、十分な成果を上げることができたものと自負している。このような背景から、(1)当初の計画以上に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究に関しては当初計画の予定通りに順調に進展しており、翌年度も基本的には当初計画通りの研究推進を予定している。具体的には、三重項励起状態の関与するエキシプレックス形成と励起CT錯体を利用した不斉合成への応用の検討を計画している。また、これまでの2年間で、当初の予想以上に研究が進展していることから、もう少し大きな視点からは、電荷移動相互作用以外の弱い相互作用を光不斉反応制御へ展開できないか、新しい次元でのプロジェクトの展開を視野に入れ、初期的な検討をあわせ試みたい。国内外の共同研究もさらに積極的に展開する予定である。また、新聞報道や著書執筆などによる広報活動にも力を入れたいと考えている。
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