これまで行ってきた面不斉遷移金属錯体を用いた不斉閉環メタセシス反応をさらに拡大・発展させ、「面不斉化合物の不斉合成」の包括的な理解を確立すべく、本年度は、「面不斉 to 面不斉」転写反応による面不斉遷移金属錯体の不斉合成反応の検討、および「面不斉 to P-中心不斉」転写による光学活性ホスフィン化合物の合成を行なった。まず、面不斉 to 面不斉」転写反応による面不斉遷移金属錯体の不斉合成については、ハプト6-アレーン上の二つのアルケニル基間での不斉閉環メタセシスによる面不斉の制御、およびその結果生じた光学活性ハプト6-インデニル錯体へ2つ目の遷移金属カチオンが配位する際のジアステレオ選択性の制御の検討を行なった。その結果、不斉閉環メタセシスについては、高い立体選択性で対応する環化体のクロム錯体を合成することに成功した。さらに、この光学活性光学活性ハプト6-インデニル錯体クロム錯体に対して、ロジウム錯体化することにより、ハプト6-クロムーハプト5ロジウム二核インデニル錯体を得ることに成功した。また、「面不斉 to P-中心不斉」転写による光学活性ホスフィン化合物の合成については、アレーン芳香環上のアルケニル基と不斉閉環メタセシス反応による不斉非対称化を行うことで、P-キラルなホスフィンクロム錯体を合成することに成功した。このクロム錯体を反応終了後に脱クロム化を行うことにより、非環状のP-キラルホスフィン化合物となるが、アレーンクロム錯体をプラットフォームに用いることにより、形式的にZ-選択的なクロスメタセシスが進行した場合と等価な手法を開発することに成功している。
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