研究課題/領域番号 |
15H03783
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
栗原 正人 山形大学, 理学部, 教授 (50292826)
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研究分担者 |
金井塚 勝彦 山形大学, 理学部, 准教授 (50457438)
石崎 学 山形大学, 理学部, 助教 (60610334)
冨樫 貴成 山形大学, 理学部, 助教 (80510122)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ結晶 / プルシアンブルー / プリンテッドエレクトロニクス / 規則配列 / 配位高分子 / プロトン伝導 / 自己組織化膜 |
研究実績の概要 |
プルシアンブルー(PB)・ナノ結晶の独自の水分散液合成法により、「ナノ結晶同士の低温界面接合技術」を確立する。 交流インピーダンス電極をガラス基板に作製し、そのガラス基板上にSAM膜を作製、PBナノ結晶水分散液に浸漬することで、SAM基板上に、PBナノ結晶の緻密な単粒子膜の作製に成功し、これを120℃で加熱することで、ナノ結晶同士の界面接合を行った。加熱前後での膜強度の比較から、原子間力顕微鏡(AFM)のコンタクトモードによる膜強度の微視的可視化法(ナノスクラッチ評価法)の開発に成功した。加熱後の膜では吸収スペクトルにおいて電荷移動吸収極大が短波長側にシフトすることを見出し、加熱後の結晶界面の電子状態の変化から、化学結合が生じていることを証明し、分光化学的手法による「低温界面接合の可視化法」にも成功した。 交流インピーダンス測定から、単粒子膜では湿度依存性が顕著な伝導度が得られ、活性化エネルギーからイオン伝導はvehicle機構であることを明らかにした。一方で、加熱膜では、湿度依存を殆ど示さない10-1 Sm-1に迫る極めて高い伝導度が発現した。この伝導度は、これまで報告されてきたMOFやPCP結晶での最高値に属する値である。活性化エネルギーから伝導はGrotthuss機構(Grain-boundary-free)であることを明らかにした。重水環境下での交流インピーダンス測定を実施し、伝導が水に比べて減少したことから、プロトンが伝播する機構であることが確かめられた。温度・湿度プログラムが可能なTG-DTA装置で、加熱・非加熱によるPBナノ結晶の水分子の出入情報から、そのプロトン伝導と湿度依存性の因果関係、伝導機構や結晶界面の構造変化について評価を行っており、湿度変化とPBナノ結晶の水和数の変化が連動し、プロトン伝導機構や伝導度湿度依存性を支配していることを見出し、更なる解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りに研究が進んでいる。 研究実績で示したPBナノ結晶の単粒子膜は加熱後、プロトン伝導機構がvehicleからGrotthuss機構へと変化した。また、極めて高い10-1 Sm-1に迫る極めて高い伝導度を示す膜が得られた。これは、これまでの結晶ではペレットによる評価が一般的であったが、ナノ結晶分散液を用いた簡便な溶液プロセス膜で初めて見出された画期的な成果であり、その実践的なデバイス応用への道を拓くものである。X線回折法では、その加熱膜は、ナノ結晶が接合した多結晶膜としての情報を得ており、結晶界面の接合は、Grain-boundary-free伝導を示す「機能的=擬似的」単結晶膜であることを示しており、研究計画の若干の修正を行う。
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今後の研究の推進方策 |
結晶界面の接合によって、得られた膜はGrain-boundary-free伝導を示す「機能的=擬似的」単結晶膜、つまり、多結晶膜であることが分かった。今後の研究展開では、「単結晶化に対する可視化」ではなく、界面の機能化とその機構解明に集中した評価を実施する予定である。申請時の研究計画で、まだ、纏まっていない項目を含めて、28年度は、研究を進め、同時に27年度に得られた成果をまとめ論文投稿を実施する。
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