研究課題
本研究では、金属イオンを有機配位子で架橋した多孔性金属錯体(MOF)を利用して、ナノ金属の電子状態とくにフェルミ準位の状態密度の制御を目指す。「MOFによるナノ金属の状態密度コントロール」から得られる知見を下に、高水素機能性ナノ複合体を設計・創製し、新しい物性化学・触媒科学の展開を図る。本年度は、NiとPtに着目し、これら2種の金属ナノ粒子をCu3(BTC)2(BTC=Benzene-1,3,5-tricarb oxylate) 有機構造体被覆した複合体、Ni@HKUST-1とPt@HKUST-1を合成し、その物性を調べた。NiおよびPtナノ粒子は液相法により作製した。得られたナノ粒子のエタノール分散液にHKUST-1の原料を加え撹拌することにより目的の複合体を得た。得られた物質の構造と複合状態を調べるため、粉末X線回折(PXRD)測定、透過型電子顕微鏡(TEM)および走査透過型電子顕微鏡(STEM)によるエネルギー分散型X線分光(EDX)分析を行った。PXRD測定により、各複合体にはNiナノ粒子、Ptナノ粒子およびHKUST-1に由来する回折パターンがそれぞれ観測された。各ナノ粒子についてTEM観察を行ったところ、Ptナノ粒子の平均粒径は4.6 nmであった。一方、Niナノ粒子は凝集していることがわかった。STEM-EDXマッピングにより、HKUST-1が各金属ナノ粒子を被覆していることが明らかになった。得られたPt@HKUST-1の水素吸蔵特性について調べるため、水素圧組成等温線(PCT)測定を行った。PCT曲線の結果、Cu3(BTC)2の被覆によってPtナノ粒子の水素吸蔵量が大幅に減少することがわかった。この結果は、Pt@HKUST-1の電子状態が単独のPtナノ粒子のものとは異なっていることを示唆しており、「MOFによるナノ金属の状態密度コントロール」を確立する一つの重要な知見を得ることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
Ni@HKUST-1とPt@HKUST-1の合成に成功した。また、Pt@HKUST-1の電子状態が単独のPtナノ粒子のものとは異なっていることを水素吸蔵特性から明らかにし、「MOFによるナノ金属の状態密度コントロール」を確立する一つの重要な知見を得ることができた。
得られたPt@HKUST-1の固体NMRやXPS測定により水素吸蔵特性を徹底的に調べることで、水素吸蔵メカニズムや指導原理・設計指針を得る。また、更なる物資開発を行い、MOFによってナノ金属の物性を制御していきたいと考えている。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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