研究課題
本研究では、金属イオンを有機配位子で架橋した多孔性金属錯体(MOF)を利用して、ナノ金属の電子状態とくにフェルミ準位の状態密度の制御を目指す。「MOFによるナノ金属の状態密度コントロール」から得られる知見を下に、高水素機能性ナノ複合体を設計・創製し、新しい物性化学・触媒科学の展開を図る。本年度は昨年度合成したPt@HKUST-1に関して水素吸蔵特性を詳細に調べた。Pt@HKUST-1の水素吸蔵量(H / Pt)は 0.25であり、Ptナノ粒子(H / Pt = 0.43)に比べ、半減することがわかった。そこで、HKUST-1の被覆によるPtナノ粒子の電子状態について調べるためX線光電子分光測定を行った。結果、PtからHKUST-1への部分的な電荷移動が起こっていることを突きとめた。一方、Ni@HKUST-1については磁気的特性を調べた。超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いた磁気測定の結果、300 Kにおいて、Ni@HKUST-1の磁化はNiナノ粒子よりも高いことが明らかになった(図5)。さらに、メスバウアー測定から、HKUST-1の被覆によりNiの内部磁場が変化していることを明らかにした。この結果はHKUST-1の被覆によってNiの磁性をコントロールできることを示している。さらに、HKUST-1の膜厚によりNiの磁性を自在に制御できることが期待される。このように、第10族元素のNiやPtのナノ粒子をHKUST-1で被覆することで、その磁気的性質や水素吸蔵特性を変化させることに成功した。この特性の変化はMOF被覆金属ナノ粒子の構造特異性、つまりは金属ナノ粒子からMOFへの電荷移動の寄与が大きいと発見した。
1: 当初の計画以上に進展している
NiやPtのナノ粒子をHKUST-1で被覆することで、その磁気的性質や水素吸蔵特性を変化させることに成功した。この特性の変化はMOF被覆金属ナノ粒子の構造特異性、つまりは金属ナノ粒子からMOFへの電荷移動の寄与が大きいと発見した。つまり、「MOFによるナノ金属の状態密度コントロール」を確立する重要な知見と得ることができた。
Ptは有機合成反応や燃料電池などに用いられる有用な触媒であり、得られた新規Pt@HKUST-1は電荷移動によりPt単体とは異なる電子状態を有することから新しい反応の発見、新たな水素の活性化の発見に繋がる新型触媒に成り得ると期待される。そこで、今後は触媒としての応用を展開していきたいと考えている。また、Ni@HKUST-1も水素吸蔵特性の評価や触媒としての可能性を追求する予定である。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 2件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
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