研究課題
本研究では、金属イオンを有機配位子で架橋した多孔性金属錯体(MOF)を利用して、ナノ金属の電子状態とくにフェルミ準位の状態密度の制御を目指す。「MOFによるナノ金属の状態密度コントロール」から得られる知見を下に、高水素機能性ナノ複合体を設計・創製し、新しい物性化学・触媒科学の展開を図る。本年度はPt@HKUST-1の水素吸蔵特性について、水素雰囲気下in-situ粉末XRD測定および重水素雰囲気下in-situ固体NMR測定により詳細に調べた。水素雰囲気下in-situ粉末XRD測定の結果、Pt@HKUST-1において、水素圧力1気圧での格子の膨張は、Ptナノ粒子単体と比べて小さいことがわかった。Pt@HKUST-1で格子の膨張·収縮が抑制されたのは、Pt-Hの結合安定性が減少したことで、格子内部に水素原子が侵入しにくくなったためだと考えられる。吸蔵された水素の状態について詳細に調べるため、重水素雰囲気下in-situ固体NMR測定を行った。Ptナノ粒子の測定結果では、Pt格子内部に吸蔵された重水素のシグナルが観測されたのに対して、Pt@HKUST-1では観測されなかった。Pt格子内部の重水素ピークの消失は、HKUST-1の被覆により格子内部に重水素が侵入しなくなった、あるいは侵入したとしても検出限界以下の濃度になったことを示しており、PCT曲線で確認された水素吸蔵量の減少と一致した傾向が確認された。これらの結果は、新規Pt@HKUST-1は電荷移動によりPt単体とは異なる電子状態を有することを水素吸蔵特性を介して明らかにした初めての例である。Ptは有機合成反応や燃料電池などに用いられる有用な触媒であり、得られたPt@HKUST-1は新しい反応の発見、新たな水素の活性化の発見に繋がる新型触媒に成り得ると期待される。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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