サンドイッチ錯体は、有機金属錯体の特徴を顕著に示し、安定かつ官能基修飾が容易な金属錯体構造を与える。サンドイッチ錯体は単核金属錯体の分子設計に広く用いられており、最も有用な錯体分子構造のひとつである。本研究では、このサンドイッチ型分子構造の概念を拡張し、金属クラスター骨格を有するサンドイッチ型錯体を開発することを目指して研究をおこなった。特に複数の遷移金属原子を大環状不飽和炭化水素や多環式芳香族分子の間にシート状に組み込む反応を開発し、その形成メカニズムと金属集合パターンの解明を目指した。 平成28年度では、前年までに得た知見をもとにして、9員環シクロノナテトラエニルと8員環シクロオクタテトラエンの間に金属シートを形成させる研究を進めた。その結果、四核金属シートのエッジ部分に低原子価金属種が付加する現象を見出した。また、シクロオクタテトラエンを背面配位子としてもつ3核シートクラスターの形成についても研究を進めた結果、低原子価金属種の付加・脱離を介した配位子交換反応を起こすことがわかった。
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