研究課題/領域番号 |
15H03790
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝紀 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70202132)
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研究分担者 |
藤原 憲秀 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20222268)
上遠野 亮 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60432142)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 酸化還元 / 分子素子 / 分子メモリ |
研究実績の概要 |
電位の変化に対応してその紫外可視吸収スペクトルが変化するエレクトロクロミズム系は、調光材料として広く用いられている。代表者らはこのようなエレクトロクロミズム系の新たなデザインを行う上で、電子移動に際して可逆なC-C結合の形成および切断を生じて、動的な構造変化を伴いながら分子が酸化および還元される動的酸化還元(dyrex)系が有効であることを見出してきた。それは、ほぼ同時に二電子移動が生じるために反応活性なラジカル種の濃度を低く抑え、また電気化学的双安定性を有するからである。後者の性質は、1分子が1ビットとして働くような単一分子メモリには不可欠なものである。本研究課題は、このようはdyrex系を複数組み込んだ分子群の設計合成を行い、一分子がnビットを担い得るのメモリユニットの創製を行うことである。 先にビフェニル骨格を有するdyrex系として、酸化に際して環内の結合が切断されて電荷が生じるもの(Endo型)と、酸化に際して新たに環構造を形成しながら環の外側に電荷が生じるもの(Exo型)の2系統を構築しており、本研究では、ビフェニル部の水素をすべてフッ素置換した化合物を基本ユニットとして設計した。これは、フッ素の芳香族求核置換(SNAr)反応を利用することで、ユニット構築後に複数ユニットを連結できると考えたからである。dyrex部分をつなぐ連結部位としては、アセチリドがSNAr反応の求核種として優れていることからアルキンユニットを選択した。本研究では、まず初めにパーフルオロビフェニル骨格を含むEndo型dyrex系A、及びExo型dyrex系Bにアルキニル基が導入された化合物の合成をおこなった。次いで、遷移金属触媒を用いた種々のカップリング反応を行い、同一分子内に複数dyrexユニットを有する一連の化合物の合成を行うことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Endo型及びExo型双方について、遷移金属触媒によるdyrex系の連結法の有効性が確認され、更なる研究展開において強力な手法を獲得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
単一有機分子nビットメモリ及び抵抗可変型分子ワイヤの提案とそのプロトタイプの創成を目指す本研究課題では、dyrex骨格を複数個有する一連の分子について、1)ダイアド、トライアド(n=2,3)の構築法の確立、2)dyrex骨格それぞれが1ビットのメモリユニットとして動作し得ることの確認、3)メモリユニットとすべきdyrex骨格の最適化/新規開発、並びに最適な連結リンカーの選択、4)リニア型連結分子でのオリゴマー(n>4)形成とその挙動調査、5)リニア型連結分子の抵抗可変型分子ワイヤとしての特性調査、6)二次元連結型の形成とその挙動調査、7)分子の基板表面での応答調査と検出法の確立、についての研究を行う計画であり、今後は、3)-7)についての研究を重点的に推進する。
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