研究実績の概要 |
27年度は縮小π電子系キラルドナー(S,S)-DM-MeDH-TTPのXP6 (X = P, As, Sb, Ta)塩が反転中心を持たない結晶構造であることを確かめるとともに,常圧および通常のクランプセルで到達可能な1.7 GPaまでの輸送特性を調べた。28年度はキュービックアンビルセルを用いて,さらなる高圧下での測定を行い,PF6塩,AsF6塩とも約3 GPa以上の圧力下で金属へと転移することを見出したが,超伝導は確認されなかった。これらの塩の常圧絶縁相を明らかにするため磁化率の温度依存性を測定し,絶縁相が電荷秩序状態であることが示唆された。29年度は電荷秩序状態を確認するため,放射光を用いた精密構造解析を行った。低温での構造解析から電荷秩序状態が示唆されたが,現在のところR値が十分収束しておらず,放射光による実験を再度行う必要がある。また(S,S)-DM-MeDH-TTPのラセミ体(±)-DM-MeDH-TTPを新たに合成し,そのラジカル塩の伝導度測定および結晶構造解析を行った。 一方,分担者のグループでは27年度に(S,S)-DMDT-METおよびそのラセミ体(±)-DMDT-METのXF6 (X = P, As, Sb)塩の作製に成功し,伝導度測定および結晶構造解析を行った。28年度は新しいキラル・ラセミドナーを用いた電荷移動(CT)塩として,(S,S)-と(±)-DMDHDA-TTPのI3,PF6,AsF6塩,並びに(S,S)-と(±)-MTDM-TTPのAsF6塩の作製をし,伝導度測定・結晶構造解析を行った。29年度はDHDT-TTPが様々なアニオンと金属的CT塩を形成することを踏まえて,そのトランス-ジメチル誘導体である(S,S)-と(±)-DMDHDT-TTPの合成を成し遂げ,AuI2,AsF6,TaF6塩の作製・伝導度測定・結晶構造解析・バンド計算を行った。
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