研究実績の概要 |
システイン、ホモシステイン、グルタチオンなどの生体チオールを選択的に検出する蛍光プローブの開発が求められている。本研究では、生体チオールを選択的に検出するプローブとしてビス(ペンタフルオロフェニル)2,5-ジアミノテレフタル酸ジチオエステルを設計・合成し、その光物性を精査した。その結果、このジチオエステルは緩衝液中では全く蛍光を示さないのに対し、ここにシステインを加えると、時間の経過とともに溶液は緑色、発光極大波長521 nmの蛍光を強く示すようになることがわかった。これはジチオエステルがケミカルライゲーションにより2分子のシステインと反応して緑色蛍光性ジアミドに変換されたためと考察している。なお、このジチオエステルはホモシテインやグルタチオンを添加しても、蛍光の発現を全く誘起しなかった。すなわち、ビス(ペンタフルオロフェニル)2,5-ジアミノテレフタル酸ジチオエステルがシステインのみを選択的に発光検出できるプローブであることを明らかにした。 発光性イオン液体の創製を目指して、2,5-ジメトキシ-1,4-ビス(ピリジニウムエテニル)ベンゼン誘導体を設計・合成、熱物性および発光性の精査に取り組んだ。その結果、ピリジニウム塩部位の対アニオンが発光極大波長に及ぼす効果をみると、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフラートイオン、ビススルホンアミドイオンの順に長波長シフトすることがわかった。発光量子収率は、0.04-0.18であり、その値の大小と対アニオンの種類との間には明確な相関は見られなかったが、2-ピリジル体の量子収率がどの対アニオンであっても最も高くなることがわかった。分子構造の屈曲性が塩発光団の発光効率に影響を及ぼしていると考えている。
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