研究実績の概要 |
四つのTTFをメチレンジチオで架橋したテトラチアフルバレノファンの合成を行い,それらの電気化学的性質について検討した。分子内環化反応は高度希釈法を用いて行った。得られた化合物の酸化還元挙動をCV法により検討したところ、四段階の+0.15 (4e-), +0.48 (2e-), +0.85 (1e-), +1.25 (1e-) V(vs. Fc/Fc+ in PhCN)の酸化還元波が観測された。既知の環状TTF四量体の酸化還元電位(+0.06 (2e-), +0.18 (2e-), +0.45 (2e-), +0.55 (2e-) V)と比較すると八電子酸化以降の酸化還元電位が高電位シフトしていた。このことからオクタカチオン状態では、既知の環状TTF四量体よりも新たに合成したテトラチアフルバレノファンの方が、クーロン反発が大きく不安定化されたことが考えられる。 また、環状型TTPオリゴマー五~八量体を合成し,それらの性質について検討した。CV測定の結果,環状型TTP五量体は七段階の酸化還元波を示した; -0.13(1e-), 0.00(1e-), +0.10(2e-), +0.19(1e-), +0.40(5e-), +0.64(5e-), +0.81(5e-) V(vs. Fc/Fc+, in PhCN : o-C6H4Cl2 = 1 : 1 (v/v))。TTPモノマーの第一酸化還元波に対応する波が環状型TTP五量体では四波に分裂したことから、環状型TTP五量体の低酸化状態では分子内で相互作用しており,その第一酸化還元電位はTTPモノマーの値(+0.06 V)よりも0.19 V低電位にシフトしている。このことから、環状型TTP五量体のラジカルカチオン状態は正電荷が分子全体で広く非局在化し、TTPモノマーのラジカルカチオン状態よりも安定化していると考えられる。
|