研究課題/領域番号 |
15H03798
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
御崎 洋二 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90202340)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多電子酸化還元系 / TTFオリゴマー / サイクリックボルタンメトリー / 有機エレクトロニクス / 有機二次電池 / 分子性導体 |
研究実績の概要 |
架橋型TTFオリゴマー分子において分子内で電荷秩序状態を発現させることを目的として、エチレンジオキシ基を有したTTF誘導体をユニットとしたオリゴマーならびに異なるTTF誘導体をユニットとしたオリゴマーを合成し、構造、電気化学的性質の検討を行った。中央のジメチル置換TTFユニットから二つのビス(チオメチル)置換TTFユニットがメチレンジチオ基で架橋されたトリマーの電気化学的測定において、5段階の酸化還元波が-0.06 (1e)、+0.01 (1e)、+0.18 (1e)、+0.41 (1e)、+0.47 (2e) V (V vs. Fc/Fc+ in PhCN) に観測された。低電位側で3段階に分裂していることから、ビス(チオメチル)置換TTFユニットのみがメチレンジチオ基で架橋されたトリマーよりも分子内相互作用が強くなっていることが示唆された。さらに、ラジカルカチオン塩の作製を電解結晶法により行い、中央のジメチル置換TTFユニットから二つのエチレンジオキシ置換TTFユニットがメチレンジチオ基で架橋されたトリマーのClO4塩を得た。X線結晶構造解析からドナー分子と対イオンの比が1:1であることがわかった。ドナー分子は結晶学的に一分子独立であり、分子内で三つのTTFユニットがface-to-face相互作用を形成している。1つのエチレンジオキシ基を有したTTF誘導体とメチル基を有したTTF誘導体が非平面構造を取っていた。このことから分子内の3つのTTFユニットに均等に正電荷が分布しているのではなく、比較的平面性が良いエチレンジオキシ基置換TTFユニットに主に電荷が分布し、非平面構造をTTFユニットにはほとんど電荷が分布していない分子内電荷秩序が示唆された。また、ドナー分子はb軸方向にhead-to-head型で積層して、分子内だけではなく、分子間でもface-to-face相互作用を形成していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
標的とする異種TTFユニットからなるオリゴマー、特にエチレンジオキシ基置換TTFユニットを含むオリゴマーをほぼ予定通り合成することに成功している。また、これらの電気化学的性質をサイクリックボルタンメトリー法により明らかにしている。さらに、酸化種の単結晶化に成功し、分子内および分子間でface-to-face相互作用を形成していることや、分子内電荷秩序状態が達成されていることを明らかにしている。順調に合成研究、電気化学的性質の評価ならびに酸化種の結晶構造解析が進められているため,平成29年度は分子内電荷秩序状態を外部刺激によって融解させるなどの刺激応答デバイスへの展開など、さらに研究を進展させることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
エネルギー貯蔵・高効率利用に資する新規多電子レドックス型分子として、環状型のTTFナノリングおよびTTFナノチューブの合成を行う。これまでの研究成果で得られた結果をフィードバックさせることによって、合成経路の最適化を検討する。また、三つのTTFが融合したTTPYを多電子レドックスユニットとする架橋型環状オリゴマーの合成に着手する。 平成28年度に得られた電荷秩序型分子性導体を利用したエネルギー変換デバイスの開発に先立って、光誘起相転移が発現するかどうかを国内の共同研究者に試料を提供して検証を行う。また、異なる電荷秩序状態を取り得る架橋型TTFオリゴマーを用いた新規導電性有機結晶を作成する。得られた単結晶の結晶構造および導電性を明らかにする。
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