研究課題
本研究ではエネルギー変換デバイスに応用が期待されている「電荷秩序型の分子性導体」の開発を目的の1つとしている。昨年度までに、中央のジメチル置換TTFユニットから2つのエチレンジオキシ置換TTFユニットがメチレンジチオ基で架橋されたTTFトリマーのラジカルカチオン塩(組成は1:1)が低導電性を示すことを見出した。これらの塩の電子状態は電荷秩序状態またはMott絶縁体であると考えられた。そこで平成30年度は、テトラセレナフルバレン(TSF)から2つのエチレンジチオ置換TTFユニットがメチレンジチオ基で架橋されたTTF-TSF-TTFトライアッド分子を設計・合成した。得られたトライアッド分子のラジカルカチオン塩の作製を検討し、トライアッド分子:PF6アニオン = 1:1の単結晶を得ることに成功した。この塩の室温伝導度は15 S/cmであり、TTFトリマーの塩よりも3桁程度高い伝導度を示し、310-120 Kの領域では伝導度が温度に依存しない強相関電子系特有の伝導挙動を示し、約90 Kで絶縁化した。296 KにおけるX線結晶構造解析の結果、正電荷はTSFユニットよりも、2つのTTFユニットにわずかに偏っている。バンド計算の結果、TTFトリマーの塩(W = 0.36 eV)よりもTTF-TSF-TTFトライアッドの塩(W = 0.73 eV)のほうがバンド幅が増大している。これらの結果はTTF-TSF-TTFトライアッドの塩において、比較的高い導電性を示した結果と一致する。また、50 KにおけるX線結晶構造解析の結果から、低温の絶縁体状態では1つのTTFユニットに正電荷(+1価)が偏り、分子内における電荷秩序状態であることが示唆された。以上の結果から、オリゴマー分子を用いて効率的に電荷秩序型の分子性導体を開発できることが明らかとなり、今後エネルギー変換デバイスへの応用が期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (3件)
Chemistry - A European Journal
巻: 25 ページ: 4984~4991
10.1002/chem.201805994
巻: 25 ページ: 4868~4868
10.1002/chem.201901030
European Journal of Organic Chemistry
巻: 2019 ページ: 2725~2728
10.1002/ejoc.201801877
巻: 2019 ページ: 2703~2703
10.1002/ejoc.201900457
Chemistry Letters
巻: 47 ページ: 760~762
10.1246/cl.180187
巻: 47 ページ: 982~984
10.1246/cl.180371
巻: 47 ページ: 1176~1179
10.1246/cl.180496
Bulletin of the Chemical Society of Japan
巻: 91 ページ: 1553~1555
10.1246/bcsj.20180157
Organic Letters
巻: 20 ページ: 5121~5125
10.1021/acs.orglett.8b01985
http://www.misaki-lab.jp
http://yoran.office.ehime-u.ac.jp/profile/ja.c50f4d602b94f70460392a0d922b9077.html
https://researchmap.jp/read0135655/