研究実績の概要 |
動的共有結合は自己修復性を持ち、熱力学的に有利な分子系を導くツールとして超分子化学分野で検討されている。本研究では、ボロン酸を基軸に階層的自己組織化から得られる単分散性ボロネート粒子の不斉触媒用担体利用や不斉分子ユニットとして酒石酸を連結した凝集誘起発光型ボロネート分子系の合成を通じて、キラルナノ構造体の機能創出を検討した。以下にその概要を示す。また、含ホウ素分子の機能開拓を通じて、基礎的知見を集積した。 1) ボロネート粒子の界面機能化に基づく不斉触媒の調製:ベンゼン-1,4-ジボロン酸とペンタエリスリトールとの逐次的ボロネートエステル化反応から得た単分散性粒子の界面には、構成ポリマー末端のアルコール水酸基が存在する。そこで、不斉補助剤であるN-ホルミル-L-バリンにボロン酸グラフト基を結合した新規化合物を合成したところ、粒子界面に化学吸着させることに成功した。次にそのキラル界面型粒子を固体触媒に適用する目的で、トリクロロシラン存在下、ケチミン類の還元反応に適用した。その結果、(S)体の目的物が優先的に得られ、不斉触媒担体としての有意性が示された。 2) ボロネート酒石酸を用いたキラルナノスケール会合体の形成と機能化:キラル分子系の会合構造をコントロールして、ナノスケールにおけるキラル反応場の機能化研究をおこなった。酒石酸エナンチオマー体はボロン酸と結合可能なジオール部位を持ち、一方、二つのカルボン酸部位は水素結合を通じてキラルなネットワーク構造体の形成を導く。われわれは、ジ(ボロン酸)導入型テトラフェニルエチレンとキラル酒石酸を反応させることでボロネート分子系を合成した。そこへ、キラルジアミン類を添加したところ、会合化挙動を経てエナンチオ選択的発光挙動がおこることがわかった。
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