研究課題
キラリティをもつ磁性体には,特異な磁気キラル効果が期待される.従来のキラル磁性研究は,おもに光学遷移に現れる効果(磁気光学効果)に注目して調べられてきたが,本研究では電子スピンを直接捉えつつキラリティを磁気分光学的に評価できる,キラルな電子スピン共鳴(ESR)法を提案した.円偏波(円偏光)化したマイクロ波を使ってESR信号を検出するには,技術的な困難があったが,定常的な磁化の静磁場と平行な成分(静的な縦磁化)の変化量をマイクロ波照射下で検出するという新しい方法をとることで克服することを提案し,測定系を製作した.基準試料を用いて,Vバンド(69 GHz帯)での円偏波ESRを測定した.この基準試料は,結晶中に反転中心と映進面をもつアキラルな構造をもつもの(ピリジン置換のニトロニルニトロキシド)を選び,静磁場の印加方向,すなわちラーモア歳差運動の回転方向の効果のみが現れる条件下で,ESRを測定した.試料のg値から予想される磁場範囲で,定常的な磁化の減少,すなわち,ESR共鳴吸収が起こることがわかった.強度のマイクロ波パワー依存性により,観測しているESR遷移に飽和は起こっていないことを確かめた.左右それぞれの円偏波を照射した時の強度比は,およそ1 : 0.6であった.静磁場の印加方向を逆転させると,ほぼ同じ強度比で左右円偏波に対する大小関係のみが逆転したことから,ラーモア歳差運動の回転方向の反転の効果が現れていると考えられる.本システムのマイクロ波ではだ円偏波成分が大きい,すなわち直線偏波成分が混入していることが明らかになった.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Phys. Chem. Chem. Phys.
巻: 19 ページ: 24769-24791
10.1039/c7cp03850j
巻: 19 ページ: 30128-30138
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