研究実績の概要 |
本応募は、環境負荷低減とレアメタルフリー有機合成を指向し、銅あるいは有機分子触媒による不斉合成法を開発することで有機合成化学に貢献するものである。炭素-ホウ素あるいは炭素-水素結合を用いることで、官能基許容性や直裁性を兼ね備えた不斉炭素-炭素結合形成反応の開発を目指す。本年度は、関連研究も含め以下に述べるような成果が得られた。 1.キラルN-ヘテロ環カルベン-ナフトール複合配位子を新規開発し、協奏的触媒機構に基づく反応設計により、電子不足ヘテロアレーンと第一級リン酸アリルを用いた不斉アリル系カップリング反応を開発した。そして、90%eeを超える高いエナンチオ選択性で全炭素置換第四級不斉炭素中心を構築できた。 2.9-BBN型第2級アルキルボランとキラル第二級リン酸アリルを用いた銅/PPh3錯体触媒によるアリル系カップリング反応を開発した。反応は、γ位置選択的かつ1,3-synの立体化学で進行する。本手法は、鎖状あるいは環状の第2級アルキルボランを利用できた。 3.ビス(ピナコラート)ジボロンと末端アルキンのブレンステッド塩基(LiOtBu)触媒反応を用いた1,1-ジボリルアルケンの新合成法の開発に成功した。アルキン基質としてはプロピオール酸エステル、プロピオールアミド、2-エチニルアゾール類を適用することができる。 4.ホスフィン触媒によるアルキノエートのアシルシアノ化反応を開発した。アシルシアニドとアルキノエートを触媒量のジメチルフェニルホスフィン存在下、トルエン溶媒中 60 ℃で作用させると、炭素-炭素三重結合に対するアシルシアノ化反応が進行し、対応するアクリロニトリル誘導体を与えた。アシル基とシアノ基がアルキノエートのa位とb位にそれぞれ完全な位置選択性を伴って、anti付加形式で導入された。
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