研究実績の概要 |
本応募は、環境負荷低減とレアメタルフリー有機合成を指向し、銅あるいは有機分子触媒による不斉合成法を開発することで有機合成化学に貢献するものである。炭素-ホウ素あるいは炭素-水素結合を用いることで、官能基許容性や直裁性を兼ね備えた不斉炭素-炭素結合形成反応の開発を目指す。本年度は、以下に述べるような成果が得られた。
1.アリル求核剤とアリル求電子剤を用いたエナンチオ選択的アリル-アリルカップリングは、有機合成上重要な中間体であるキラル1,5-ジエンを効率的に与えることができる。しかし、その報告例は未だ限られている。研究者は、フェノール-N-ヘテロ環カルベン複合型キラル配位子を用いたアリルホウ酸エステルと (Z)-リン酸アリルの銅触媒エナンチオ選択的アリル-アリルカップリング反応の開発に成功した。本反応は、優れたγ位置およびエナンチオ選択性で進行し、アリル/ホモアリル位に不斉sp3炭素を有するキラル1,5-ジエン誘導体を与える。既存法では適用困難であった鎖状および環状の脂肪族型(Z)-アリル基質を用いることができる。 2.イソシアニドは、これまで有機合成に幅広く適用されている。たとえば、イソシアニドは金属-ヒドリド結合に1,1-挿入し、ホルミイミドイル金属種を与える。ホルムイミドイル金属種はホルミルアニオン等価体であり、魅力的なC1反応剤として期待される。しかし、このイソシアニド1,1-挿入反応過程を含む触媒反応は、ほとんど知られていない。研究者は、ナフトール-N-ヘテロ環カルベン複合型キラル配位子の Cu(I) 錯体とリチウムtert-ブトキシドによるイソシアニド、ヒドロシラン、γ,γ-二置換アリル求電子剤の不斉3成分カップリングを見出した。本反応によりキラルα-第4級ホルムイミドおよびアルデヒドが効率的に不斉合成できた。
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