研究課題/領域番号 |
15H03805
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
小笠原 正道 徳島大学, 大学院理工学研究部, 教授 (70301231)
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研究分担者 |
高橋 保 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (30163273)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 面不斉 / 不斉合成 / フェロセン / シマントレン / ホスホール / ピリドン / エナンチオ選択的 / ジアステレオ選択的 |
研究実績の概要 |
メタロセン/ハーフメタロセンが縮環した種々のヘテロ芳香族化合物を「エナンチオ選択的に」合成する手法を開発した。これらの化合物では、非対称メタロセンに起因する「面不斉」が発現する。 1,2,4-ブタントリオールに由来するキラルなアセタールを側鎖に有するフェロセンは、アセタールの誘引効果により高いジアステレオ選択的でブチルリチウムによりリチオ化できる。この反応を利用して、フェロセンの面不斉を制御しつつブロモ基と2-ブロモビニル基をシクロペンタジエニル環の隣接位に導入したのち、ジクロロフェニルホスフィンとの反応により環化させると、フェロセンが縮環した面不斉ホスホールを合成することができた。この合成手法によるエナンチオ選択性は99%以上であり、ほぼ光学的に純粋な面不斉ホスホールが得られる。同様の手法により、シマントレンが縮環した面不斉ホスホールも単一のエナンチオマーとして得ることができる。これらのホスホールは、その面不斉を保持したまま対応するホスホリドへと変換できる。それらを求電子剤と反応させることにより様々な面不斉ホスホール誘導体が得られる。 また、「フェロセンへのエナンチオ選択的置換基導入、置換基を利用した環化反応」という手法を用いることにより、「フェロセンが縮環した面不斉4-ジアルキルアミノピリジン類」をエナンチオ選択的に合成する手法も開発した。フェロセンにトシルアミド基と1-ヒドロキシプロパルギル基を導入し、酸化的環化反応を行うと、フェロセンが縮環した面不斉4-ピリドンが単一のエナンチオマーとして得られる。こうして得られたピリドンに種々のシリルアミンをルイス酸存在下で反応させると、目的化合物を高収率で得ることができる。この合成ルートは、様々な置換基、立体的に嵩高いフェロセン誘導体に対しても効果的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的の一つである「メタロセンが縮環した面不斉ヘテロ芳香族化合物のエナンチオ選択的合成法」を確立することができた。「メタロセンの面不斉を制御して適切な置換基を導入した後、その置換基間での環化反応によってヘテロ環を構築する」という我々の方法論の妥当性を、面不斉ホスホール、面不斉ピリドン/ジアルキルアミノピリジンにおいて証明することができた。これらの結果は、我々の合成手法が一般性を有しており、多様な面不斉ヘテロ芳香族化合物の合成が可能なことを示している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、「メタロセン縮環面不斉ヘテロ芳香族化合物」をエナンチオ選択的に合成する一般性のある方法論を見いだすことができており、今後はより高機能性を有する新たな面性キラルなヘテロ芳香族の合成を検討することになる。具体的には、面不斉フェノール類、面不斉環状リン酸誘導体などを合成ターゲットとして考えている。これらの化合物には、ブレンステッド酸性があり、合成された後には新たな酸性触媒としての機能が期待できる。また、フェノール類は容易に誘導化でき多様な芳香族化合物の原料となることから、新たな面不斉化合物ライブラリーの共通原料となることも期待できる。
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