1)Rh-Bisoxazolimylphenyl(Phebox)錯体を用いた不斉ボリル化を本研究開始初期に成功しているので、その中間体ボリル錯体の理論計算による安定構造を求め反応機構の解明を行った。理論計算によって、新しくジボリル錯体が安定であることを突き止めた。しかしながら、続くオレフィンの挿入、還元的脱離並びにそれぞれの遷移状態の構造を明らかにすることはできなかった。 2)新規開発したNNO型配位子であるBinThro光学活性配位子について、パラジウム錯体による不斉アリル化の高エナンチオを達成し、学術雑誌へ投稿し掲載に至った。配位子がアルコキシ塩基配位子として働いていることを明らかにした。 3)不飽和ケトン類の共役還元ヒドロシリル化においてRh-Phebox錯体の安定構造と触媒中間体ならびに遷移状態の解明に成功し、Synthesis誌に発表した。具体的には、反応機構の中で活性触媒の生成過程にて理論計算から、ケイ素-水素結合がπ配位した中間体の存在を見出した。 以上、計算化学的アプローチでの成果においては、触媒反応実験金属錯体の分子量・原子数が多く計算時間が長くなるため、名古屋大学所属の計算機センターの利用を並行して実施することもできた。6)以上、最終年度として、新規な窒素系複合配位子の設計ならびに不斉触媒として活性を示す金属ならびに反応の種類、基質についてまとめ、新規配位子の有機合成における有用性を示しすことができたと考える。学術論文への成果の投稿ならびに専門領域学会と討論会、さらには国際会議にて発表を行った。
|