ニッケル錯体を用いる単純ケトンの脱カルボニル化反応をアミドの脱カルボニル化反応へと展開した。種々のアミドを検討したところ、アミン部分にピロールやインドールを持つN-アシルピロールやインドールの脱カルボニル化反応が進行し、N-アリールピロールやインドールが生成することを見出した。0価のニッケルシクロオクタジエン錯体に対して、加える配位子は2つが有効であることが分かった。一つはトリシクロヘキシルホスフィンを用いる系で、この系では錯体と配位子を化学量論量用いる必要があるものの、反応は80度と比較的温和な条件で、より広範な基質に対して進行することがわかった。もう一つは二座のビス(ジ゛シクロヘキシルホスフィノ)エタン配位子を用いる系で、180度に加熱する必要があるものの、触媒的に反応は進行する。反応の電子効果については、芳香環上に電子求引基を持つアミドがより高い反応性を示すことがわかった。さらに、ケトンの場合とは異なり、二座配位子を用いた時に触媒的に反応が進行するのは、180度でニッケル錯体からの一酸化炭素配位子の解離が起こることも明らかにした。 芳香族カルバメートの脱炭酸反応によりアリールアミン誘導体を合成する反応を見出した。この種のカルバメートの脱炭酸反応は、アリルカルバメートに限定的であった。本研究では、ニッケル錯体と電子供与能に優れた二座のビス(ジ゛シクロヘキシルホスフィノ)エタン配位子を組み合わせることにより、フェノール由来のカルバメートの脱炭酸反応が進行することを見出した。
|