研究課題/領域番号 |
15H03817
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
灰野 岳晴 広島大学, 理学研究科, 教授 (80253053)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超分子ポリマー / グラフト共重合 / 分子認識 / 自己組織化 / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
複数のモノマーより調製される共重合体の物性は,重合に用いるモノマーの種類だけでなく,その配列構造に大きく影響を受ける。従って,共重合体の配列構造制御はポリマーの物性を自在に制御するための有効な手段である。共重合体の物性制御の観点から,これらの精密構造制御が盛んに研究されている。ブロック共重合体では,リビング重合を利用することでかなり高い精度で共重合体の構造制御ができるようになってきた。一方で,グラフト共重合体の構造制御には,まだ解決されなければならない問題がある。例えば,高分子主鎖にグラフト鎖を位置選択的に導入するには,二種類以上の重合反応を精密に制御する必要があるため,利用できる重合反応は限られている。今回,位置および立体選択的にグラフト鎖を幹ポリマーに導入する超分子化学を基盤とした新たなグラフト法を開発する。 我々は,超分子カプセルの形成を利用した新たなグラフト法を開発した。カプセル分子に包接される複数のゲスト分子を組み込んだポリマーを合成し,そこに分子カプセルを添加するとゲスト部位が選択的に認識され,グラフト鎖が効果的に導入された。この超分子グラフトはポリマー主鎖の構造に大きな変化を誘起した。ポリマー主鎖はランダムコイルを形成していたが,超分子グラフト鎖の導入によりポリマー主鎖はらせん構造に転移することがわかった。また,超分子グラフトポリマーに対するカプセル分子の包接に不斉増幅現象が確認された。 超分子カプセルの分子認識を利用して超分子星形ポリマーの新たな合成法を開発した。超分子化学を用いた本手法により,二種類以上の性質の異なるポリマー側鎖を導入した星形ポリマーの合成に成功している。 フラーレンとカリックス[5]アレーンの会合とポルフィリンとTNF分子の会合,水素結合錯体の三種類のSelf-Sortingを利用したABCの配列構造をもつ配列制御された三元共重合ポリマーの合成にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は概ね順調に進行している。当初計画した分子カプセルの分子認識を利用した超分子グラフト法により新たな超分子グラフトポリマーを開発することができた。この研究を通して,新たなナノ構造制御の手法を見出すことに成功しており,ポリマー主鎖の構造制御に新たな指針を提案する画期的なものであると自負している。また,グラフト鎖導入においてこれまでに例のない不斉増幅現象を発見した。当初予想していなかったこの現象を見出すことができたことは,本研究計画における大きな成果であると考える。さらに,星形ポリマーの新たな合成手法を開発できたことは,大きな収穫であると考えている。加えて,超分子三元共重合ポリマーの合成にも初めて成功しており,本研究計画は当初の計画どおりに順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針は,超分子グラフト構造の合成とナノ構造制御について検討を行う。我々が開発した三元共重合構造にそれぞれ異なるポリマー側鎖を組み込むことで,三種類のポリマー側鎖が自発的に自己組織化(Self-Sorting)これまでに例のない三元共重合超分子グラフトポリマーを合成する。この手法は,幹ポリマーに複数の性質の異なるグラフト鎖を自在に配列制御できることから,極めて有効な高分子の立体的および物理的性質の制御法となる。また,グラフトポリマーの自己集合により生成するナノ構造はグラフト鎖の構造や物性により大きく支配されるため,側鎖を自在に導入できる本方法はナノ構造制御の有力な手段を提供する。
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