研究課題/領域番号 |
15H03822
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平野 愛弓 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (80339241)
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研究分担者 |
山本 英明 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (10552036)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 活動電位 / イオンチャネル / 脂質二分子膜 / シリコンチップ |
研究実績の概要 |
本研究では,human Ether-a-go-go Related Gene (hERG)チャネルを包埋した安定化脂質二分子膜に基づき,この膜中にさらにNaチャネルを包埋することにより,人工脂質二分子膜における世界初の活動電位の発現と,人工活動電位の変化を指標とする新しい薬物副作用評価法の創案を目指している.初年度の平成27年度は,そのための基本となるイオンチャネルの包埋過程について検討し,包埋確率の向上について検討した.生体チャネルは細胞膜脂質に包まれたリポソームの状態で抽出され,脂質二分子膜との膜融合によって膜中に包埋されるが,膜融合の過程を遠心力の負荷によって促進することにより,チャネルの包埋確率を,これまでの約6%から約70%にまで向上させることに成功した.また,本研究で提案する人工活動電位に基づく薬物副作用評価法と,これまでに開発してきたhERGチャネル電流の抑制に基づく副作用評価法とを効率的に比較するためのhERGチャネルアレイ測定系の構築についても検討を行った.生物の分野で用いられる96ウェルプレートに着目し,この構造を参考にした96膜同時測定系の設計と構築を進めている.さらに,現行法であるパッチクランプ法との比較についての検討も開始した.現在までに,オートパッチクランプ法の測定環境の立ち上げを行い,hERGチャネル発現細胞からのwhole-cell電流を記録できるようになっている.この他,脂質二分子膜の絶縁性と栄養透過性とを兼ね備えた性質を神経細胞の活動記録法に応用し,細胞外電位記録法にグリア細胞膜を結合することによりこの方法の課題であった微小信号を増幅することにも成功している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の検討項目であったチャネルタンパク質の二分子膜への包埋効率の向上,アレイ測定系の構築,パッチクランプデータとの比較,膜内電極の配置については順調に進展している.特に長年の課題であったチャネル包埋効率の向上については,これまでの約6%から約70%へと著しく確率を向上させることに成功しており,今後の発展に向けて着実に基礎技術を集積している.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に確立した高効率なチャネル包埋方法とアレイ測定系とを融合することにより,high throughputなhERGチャネルアレイの構築へと展開する.また、この包埋法を用いて,hERGチャネルとNavチャネルの共包埋について検討し,人工活動電位の発現とそれに基づく副作用評価法へと展開する.
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