水中かつ常温常圧の生体に適用可能な限られた条件下において、分子の機能を意のままに操る化学の創出は、困難で価値のある挑戦である。そのような生体適合性分子化学の成熟は、医薬分子の副作用の低減、新規作用機序の開発、薬物送達の実限など、分子の医療応用において産業的にも学術的にも大きなインパクトを与えると期待される。本研究では、生体適合条件下で利用できる化学反応を開拓し、機能をOFF-ON制御可能な分子スイッチの開発を目指す。具体的には、生体内の特定環境で進行する化学反応によって解除される部位を、生体分子(ペプチドおよび核酸)にハイブリッドすることで、生体関連機能をOFF-ON制御可能な分子スイッチの具現化に挑戦した。 本研究と類似の技術として、光によって分子の機能をOFF-ON制御する優れた技術であるPhoto Cagingも国内外で盛んに研究されている。しかし、治療を主眼とした医療応用においては、分子に自ら考える能力を与えることが重要であり、外部からの入力を必要とするPhoto Cagingに比較して、その場の環境に自律的に応答する本研究の目指す分子スイッチがより合目的である。本研究によって創製されるハイブリッド型分子スイッチは、化学反応性部位を生体分子に導入する申請者のこれまでの研究成果から派生した独創的なものである。近年、生体分子の実用化(特に抗体)が進んでおり、その生体関連機能にOFF-ONスイッチング機構を導入できれば、医薬品の副作用の低減、新規作用機序の開発、薬物送達の実限を可能にすると期待され、特に医療分野において産業的にも学術的にも大きなインパクトを与えると予想される。
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