研究課題/領域番号 |
15H03842
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
齋藤 徹 北見工業大学, 工学部, 教授 (40186945)
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研究分担者 |
上原 伸夫 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50203469)
高貝 慶隆 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (70399773)
前田 貴史 北見工業大学, 工学部, 助教 (80758227)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境技術 / 環境材料 / 医療排水処理 / 抗生物質 / 吸脱着 / 分解反応 / ナノ環境計測 / 溶液化学 |
研究実績の概要 |
医療活動や健康維持に使用される薬物による生態系への影響が懸念されているが、現行の排水処理技術は薬物の除去に対応したものとはいえず、水環境への漏出が世界各地で報告されている。本研究は、薬物を選択的に捕捉する機能を有する分離場を設計し、排水中の薬物を迅速かつ一斉に除去できる高効率かつ低環境負荷型の排水処理技術の可能性を検討した。 1. 凝集フローテーション法による排水中抗生物質の迅速除去 アニオン界面活性剤、高分子電解質およびアルミニウム塩を水中に添加し、気泡を送り込むことにより、気液界面に薬物を選択的に捕捉し、かつ凝集により回収することができた。微視的環境プローブ法により、水中および気液界面に薬物の捕捉に関与する疎水場の形成が示唆された。最適化により、既存の処理技術によっては効果的な除去が難しいとされるテトラサイクリン系抗生物質のほか、種々の酸性薬物および塩基性薬物を一斉かつ迅速に排水中から除去された。 2. オルガノクレー固液界面分離場の設計と排水中抗生物質の低環境負荷捕集・分解 二本鎖型界面活性剤修飾ベントナイト(オルガノクレー)による抗生物質の捕集と分解の機構を検討した。質量分析の結果、分解生成物は抗菌性の基となるβ-ラクタム環が開裂したペニシロ酸であった。分解反応は一次反応により進行し、温度の上昇とともに促進された。アレニウスプロットの傾きより、分解反応の活性化エネルギーはバルク水中と比べて大幅に低下し、オルガノクレーがβ-ラクタム環開裂の触媒として機能することが明らかになった。界面活性剤収着量の増大およびpHの低下につれて反応速度定数が増大することより、界面活性剤の疎水性やクレー担体の酸点が触媒機能に関与することが示唆された。本法はペニシリン系およびセファロスポリン系など種々のβ-ラクタム系抗生物質の捕集と分解に有効であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
排水中抗生物質の捕集に有望と考えた2つの方法の有効性が示された。凝集フローテーション法は、微量の界面活性剤を含む凝集剤による凝集現象と気泡分離(曝気)を合わせた方法であり、疎水的な気液界面への薬物捕捉といった除去機構の解明および適用範囲の拡大のための設計指針が得られた。本法を凝集、曝気および固液分離等の要素技術に適合させることにより、効果的な医療排水浄化技術が設計できると考えられる。一方、オルガノクレーは、全抗生物質の6割超を占めるβ-ラクタム系抗生物質の捕集と分解への有効性が示され、分解生成物の同定や速度論的解析から反応機構解明への道筋が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
凝集フローテーション法においては、テトラサイクリン系抗生物質の他に、外来患者への処方が増加しているフルオロキノロン系抗生物質および種々の酸性および塩基性薬物の除去に対する適応性を明らかにする。薬物の疎水性の尺度である水-オクタノール間分解係数と諸条件化における除去率を系統的に調べ、本法の設計指針を得る。環境適合性の向上のために、バイオサーファクタントの利用も試み、可溶化能や起泡性の高さを利用した除去率の向上を目指す。 オルガノクレーの利用については、医療機関や薬品工場を想定した高濃度抗生物質排水のスポット処理と大規模排水処理の両面から検討する。オルガノクレーの透水性の低さを解決するために、前者については透水性の高い担体との混合層の検討と吸脱着と分解速度の調節による連続使用の試みを、後者においては凝集フローテーションの吸着剤としての利用を検討する。
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