研究課題/領域番号 |
15H03844
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
間瀬 暢之 静岡大学, 工学部, 教授 (40313936)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グリーンケミストリー / マイクロバブル / ナノバブル / ファインバブル / ウルトラファインバブル / 気相-液相反応 / 多相系反応 / グリーン化学プロセス |
研究実績の概要 |
研究の全体構想である「MNB手法による次世代型気相-液相(-固相)グリーン製造化学プロセスの確立」を達成するために、本研究において挑戦するポイントは三つある。Stage 1:改良型MNB発生装置の開発、Stage 2:MNB手法による有機反応・合成の一般化、Stage 3:MNB手法の定量化。まずはこの三つのポイントに焦点を絞り、本手法の優位性を確立する。本研究課題を達成後、MNB手法の単位操作化・集積化・自動化することにより実用化への道が開かれる。平成27年度にStage 1を終了したので、平成28年度において、Stage 2を実施した。特に、2-1.水素還元反応の確立において、H2-MNBを高濃度に発生することにより、炭素-炭素多重結合、ニトロ基の還元を常圧で収率良く達成した。また、酸化反応を組み合わせることにより、ワンポットでの過酸化水素合成も達成した。一方、2-2.オゾン酸化反応の確立を試みたが、実質的にオゾンが低濃度であるため、十分な物質量でのオゾン酸化を達成できなかった。また、2-3.種々の気体を用いた有用物質合成に取り組んだところ、NH3やアセチレンガスをMNB化することにより、通常バブリングよりも効率よくアミノ化反応等が進行した。さらに、2-4.気相-液相-液相反応手法の確立を検討したところ、3相とも移動相にもかかわらず、相間移動触媒条件での空気酸化による水酸基化反応が進行した。なお、2-5.不斉合成への応用について、残念ながら反応スケールが合致しなかったため実施できなかった。しかし、小流量MNB発生装置の開発に取り組み始めたため、次年度に不斉合成への応用を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Stage 2:MNB手法による有機反応・合成の一般化において還元反応、酸化反応、アミノ化反応、気相-液相-液相反応を達成しており、Stage 3:MNB手法の定量化の検討を開始している。さらに、小流量MNB発生装置の開発にも取り組み始めている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従って、平成29年度にStage 3に取り組む。また、当初の計画にはないが、小流量MNB発生装置の開発にも取り組む。 3-1.溶存気体量など基礎的物理データの定量化 MNB手法を実用化する上で、基礎的物理データを定量化し、モニタリングしながら定常状態で操業することは最も重要な要件である。特に溶存気体濃度は反応に直接関与するパラメータであり、本研究課題においてO2ならびにH2の各種液体における溶存気体量の定量化を実施し、従来法とMNB手法を比較する。ただし、有機溶媒中で溶存気体濃度を測定できるのはO2に限られる。また、CO2やNH3などはpH測定により定量化し、MNB手法の優位性を評価する。 3-2.気泡サイズ、個数濃度の定量化 MNBを可視化するとともに、気泡サイズならびに個数濃度の定量はチャレンジングな課題である。近年の測定装置の進歩により水中のMNBの挙動は少しずつ明らかになってきているが、有機溶媒中の挙動についての例は皆無に等しい。これまでの予備的研究において、粒子トラッキング法によりメタノール中に存在する空気ナノバブルの可視化に成功している。しかし、気泡サイズならびに個数濃度の定量化は不十分であり、種々の気体と液体におけるMNBを網羅的に測定し、精度の高い定量化を実施する。これにより気体・液体導入量・圧力・オリフィス径・粘度・誘電率・温度などの物理パラメーターと、反応収率・選択性等の化学パラメーターとの相関を求め、総合的にMNB手法を評価する。
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