研究課題/領域番号 |
15H03847
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (40302187)
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研究分担者 |
梶田 徹也 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50729233)
吉本 惣一郎 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (30323067)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電気化学 / ラマン分光法 |
研究実績の概要 |
研究代表者の研究グループでは、電池の電極反応を分光学的な視点より解明している。電極界面を解明する手法の1つである「その場ラマン散乱・赤外吸収分光法」により、高活性な電極界面のダイナミックスをこれまで明らかにしてきた。電池特性の鍵である高活性な電池電極界面では、溶媒和した分子が溶媒和・脱溶媒和しながら電極反応が進行していると考えられるが、その反応についての詳細は未だ推測の域を脱していない。当該研究課題では、分光学的手法であるラマン分光法などの振動分光学的な手法を高活性な電池材料界面に展開する。分子の酸化還元反応に伴う分子の溶媒和・脱溶媒和過程を学術的な分光学側面から追跡し、溶媒和・脱溶媒和過程と電気化学特性の関係を明らかにすることを大きな目的としている。本研究課題は電池特性の鍵である高活性な電極界面における電池反応に関し大きな知見をもたらし、革新的電池技術開発の一翼を担う。 当該研究課題では、分光学的手法であるラマン分光法や赤外分光法などの振動分光学的な手法を電池材料界面に展開する。特に、リチウムイオンの溶媒和・脱溶媒和過程を分光学側面から追跡し、溶媒和・脱溶媒和過程と電気化学特性の関係を明らかにすることを大きな目的としている。本研究課題では、実電池に即した研究に礎を置いているので、混合溶媒を用いた場合の溶媒和・脱溶媒和過程についても検討を行い、高活性電極界面の統一的見解を導き出すことを研究期間内に行う。得られる知見は、急速充放電必要としている電気自動車用車載リチウムイオン2次電池の研究開発に大きな知見を与えると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶媒和電解液のその場ラマン分光測定を実験の初期段階において、黒鉛負極合材電極界面において行う。特に、急速充放電を念頭においた1C程度の充放電電流を電極に印加し、その場ラマン測定をを行う。この急速充放電により、電極界面における溶媒和・脱溶媒和反応が急速に進行し、溶媒和・脱溶媒和反応がラマン測定にかかる溶媒和分子数を増した条件下での実験を遂行する。図8に溶媒和した分子が脱溶媒和し、黒鉛負極に取り込まれる反応の模式図を示す。溶媒和したリチウムイオンが脱溶媒和し、脱溶媒和したEC分子が電極表面に残存していると想定している。この残存しているEC分子は、電極界面に生成しているとされているSEI(Solid Electrolyte Interface)膜と関連があると考えている。このSEI膜は、電池における電池特性を決定づける鍵として従来より着目されているが、推測の域を出ていない。当該研究課題では、この脱溶媒分子とSEIの関係についても検討を行い、電池開発の一助として貢献したい。
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今後の研究の推進方策 |
(1)EC系電解液の他に、DMC(ディメチルカーボネート)系、DEC(ディエチルカーボネート)系等の混合溶媒についても検討し、電解液の系を広げ、溶媒和・脱溶媒和反応過程の詳細な反応過程を描く。 (2)リチウム電池用有機電解液に加え、イオン液体についても検討を行う。リチウムイオンに溶媒和するイオン液体は、次世代のリチウム電池用電解液として期待されており、溶媒和・脱溶媒和の機構をラマン分光の側面より検討する。さらに、有機電解液とイオン液体の溶媒和・脱溶媒和機構の比較をラマン分光の側面より検討し、電池の高性能化へと繋げる。 (3)添加剤(ビニレンカーボネート(VC))等と電極界面におけるSEI(Solid Electrolyte Interface)の関係についても分光学的側面より検討を行う。負極電極界面とSEIの状態、電池特性等の関係を明らかにする。 (4)27年度は、リチウム電池用黒鉛負極反応について検討を行うが、さらに、正極材料についても検討をすすめる。正極材料においても、リチウムイオンの脱挿入反応が進行しており、溶媒和・脱溶媒和反応が進行していると想定される。本タスクでは、正極合材電極(Co系、Mn系、NMC系、MnNi系、MnCo系等)における反応解析を、溶媒和・脱溶媒和の観点より行い、リチウムイオン電池反応過程解析の深化に努める。
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