研究課題/領域番号 |
15H03851
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
田所 誠 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 教授 (60249951)
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研究分担者 |
松井 広志 東北大学, 理学研究科, 准教授 (30275292)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | クラスレートハイドレート / 水クラスター / 分子性ナノ細孔 / 固体NMR / Xeハイドレート / メタンハイドレート / 分子ナノフルイディクス / 水和イオン |
研究実績の概要 |
直径 ~1.6 nmの一次元ナノチャネル構造をもつ分子性多孔質単結晶に閉じ込められた水クラスター(WNT: water nanotube cluster)は、融解-凝固の相転移挙動をもち、壁面の相互作用で融解状態でも安定なWNTのクラスター構造をもつ。一般に、ガスハイドレートは低温/高圧下で存在する得意な構造をもつ不安定な氷構造から作られているが、湿度を調整することによって空孔型のWNTを調整し、ガス分子を挿入するだけで、ガスハイドレートを形成し、常温常圧で安定化するものを作ることに成功した。平成28年度はXeハイドレートを室温で形成することは分かっているので、CD4を用いて、室温付近での気体の吸蔵・放出が可逆にできる物質の開発を行った。このWNTを用いて、水から氷への速度論的な凝縮反応を利用して、CH4のエネルギーガスを安定化させれば、常温常圧で吸蔵・放出するガスハイドレートの研究行うことが可能である。一方、電解質水溶液は、水和したイオンの素早い移動のため電気の良導体であるが、これがナノメートルオーダーの限られた1次元空孔のWNT中で電解質塩を任意の割合で溶かし込むことに成功した。しかも、このWNTは、ハロゲン化物イオンの塩を溶かし込むことはできるが、その他の陰イオンを溶かし込めないというイオン選択性をもつことを明らかにできた。このことを利用すればイオン透過型のデバイスができるであろう。電解質イオンの導入によって、水分子自体の個数が少なくなるため、あるいは水和によって構造化するため、プロトン伝導度は低くなるが、電解質イオンの移動によって電導性が3桁近くも大きくなっているものと考えられる。現在、共同研究によって直流での測定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
~1.5 nmのサイズをもつ準1次元ナノチャネル細孔をもつ分子性多孔質結晶に巨大な水分子クラスター(WNT)を安定化することに成功した。このWNTは湿度を調節することで抜けやすい中心部分の水分子のみ取り除くことが可能で有り、その空間を有するWNTにXeやCH4を-20℃で大気圧で閉じ込めることに成功したと考えている。一方、このWNTに電解質イオンを導入した実験で交流インピーダンスを使ってその電導性を測ることに成功した。また、本年度の実験によってこのWNTでは、取り込まれる電解質イオンの厳密な選択性を発現することが明らかになってきた。すなわち、電解質のアニオンにハロゲン化物イオン以外のアニオンを用いた場合、カチオンもアニオンも取り込むことができないことが分かった。また、ハロゲン化物イオンを用いたカチオンでも、Mg2+ような2価のカチオンは全く取り込むことができないことが分かった。これらが、イオンクラスレートハイドレートの生成できるイオンに沿っているのは興味深い事実である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、人工ガスハイドレートについては、固体NMRサンプル管内の湿度を化学湿度調整法によって調製し、室温での湿度依存性によるXeやCH4の取り込み量の温度変化を記録する。また、低温領域ではガスの取り込みに時間が掛かるものと考え、一定の湿度と温度の時間変化による取り込み量の変化を記録できればと考えている。さらに、WNTに導入した電解質イオンについては直流伝導度測定を、ナノフルイディクスの第一人者である東京大学の大宮司先生との共同研究を行って、WNT電解質の物性について研究を行っていきたいと考えている。
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