研究課題/領域番号 |
15H03854
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
吉田 司 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (90273127)
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研究分担者 |
増原 陽人 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (30375167)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 太陽電池 / 有機無機ハイブリッド / 電極触媒 / ナノ微粒子 / 電荷移動錯体 |
研究実績の概要 |
前年度見出したTCNIH-アニオンとMV2+カチオンから成る有機塩型CT錯体について、単結晶粒子の作製に成功し、単結晶X線解析よりその組成と結晶構造を明らかにした。他のイオンや溶媒分子等を含まない(TCNIH)2(MV)の組成で、単斜晶構造であり、概ねb軸に沿って(TCNIH)(TCNIH)(MV)(TCNIH)(TCNIH)...のスタック構造を取り、分子間距離が炭素のファンデルワールス半径の2倍よりも小さい緻密なパッキング構造となっていることが分かった。強いクーロン相互作用のためにDA相互作用が強まり、CT光吸収が現れると結論された。また、CTバンドの励起によって1030 nm付近に極大を持つPLを示し、CT励起子(1.2 eV)の生成が確認された。DFT計算からも、TCNIH-をドナー、MV2+をアクセプタとするCT遷移であることが明らかとなった。 新規な無機有機ハイブリッド材料として、非線形光学有機結晶として知られるDASTとp-CuSCNの電気化学的自己組織化に成功した。電解浴中DAST濃度による形態や結晶性の変化を調べ、結晶配向の変化、β型からα型への相転移、ユニークなくし形ナノハイブリッド構造の形成とその原理などを見出した。また、様々な有機色素とCuSCNの複合化を試み、カルボキシル基を有するアニオン性キサンテン色素が全く複合しないのに対して、柔らかいLewis塩基性の-NCS基を有するFLNCS色素や多くのカチオン性色素がハイブリッド薄膜を与えることが分かり、前者はHSAB則に基づくCu+への配位、後者はCu+と色素の置換がその形成原理であると結論された。 再沈法によるHB194マイクロボックス結晶の作製とその光触媒機能を明らかにした。 マイクロ波合成よるCoドープZnOナノ微粒子の合成に成功し、水の酸化に対する電極触媒機能を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
太陽電池に用いる光吸収層の新規な候補として、多様な新規有機CT材料や無機有機ハイブリッド材料を見出す当該年度の課題に対して、前年度見出されたTCNIH-とMV2+の有機CT結晶が2:1の組成を持つ従来知られていない新規化合物であることが明らかになり、さらに様々なp-CuSCN/色素ハイブリッド薄膜の作製と形成原理の解明にも成功するなど、多くの成果を得た。さらにこれも光吸収材料の候補として検討を開始したCoドープZnOの合成についてもこれに成功し、その電極機能を調べたところ、人口光合成系の構築において極めて重要な水の酸化反応に対して電極触媒機能を見出す新展開があった。さらにCT錯体のナノ結晶化と薄膜化についても成功しており、最終年度においてデバイスを構築評価する準備も整った。
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今後の研究の推進方策 |
(TCNIH)2(MV)有機CT結晶については、その類縁体を用いたバリエーションの拡大、結晶構造の解明を進めつつ、それらの再沈法によるナノ結晶化、薄膜化と光伝導度測定に取り組む。また、他の二分子系CT錯体についてもナノ結晶薄膜を用いたデバイスの構築評価を進め、CTC太陽電池のコンセプトを実証する。また、得られたナノ結晶についてPL測定を行い、そのエネルギー効率やPL量子収率を明らかにする。 p-CuSCN/色素ハイブリッド薄膜をZnO膜状に積層して、ダイオード素子を作製し、その太陽電池機能を評価する。PL測定や電導度測定により、キャリア発生と輸送に適した膜構造や組成を明らかにする。同時に、得られた新材料についてはそのレドックス機能やセンシング機能なども評価し、新たな応用についてもこれを模索する。 電極触媒機能が見出されたCoドープZnOについて、ガスクロマトグラフを導入し、実際の電流効率や過電圧等の評価を進め、材料合成にこれをフィードバックしつつ触媒性能の向上を狙う。
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