研究課題/領域番号 |
15H03874
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
獨古 薫 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (70438117)
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研究分担者 |
都築 誠二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (10357527)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イオン液体 / 濃厚電解液 / 電池 |
研究実績の概要 |
グライム類とLiN(SO2F)2およびNaN(SO2F)2からなる溶媒和イオン液体を調製した。これらの溶媒和イオン液体と低誘電率のフッ素系溶媒と混合することで液体の粘度の低下を図りリチウム二次電池やナトリウム二次電池への適用を試みた。NMR測定やラマン分光測定の結果からLiイオンやNaイオンと錯形成をしていないグライム分子は液体中にはほとんど存在しないことが分かった。また、これらの液体はリチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池の電解液として適用可能であることを実証した。 グライム類以外の溶媒(プロピレンカーボネート、スルフォラン、ドメチルスルフォキシドなど)を用いた3mol/L程度以上のLi塩高濃度電解液も、溶媒和イオン液体と類似の性質を示す。プロピレンカーボネートを溶媒に用いて様々なLi塩を高濃度で溶解させた電解液の場合、Li塩を構成するアニオンのルイス塩基性が強い場合には、Liイオンの配位に参加しないフリーな溶媒が多く存在するのに対し、ルイス塩基性の弱いアニオンの場合にはフリーな溶媒がほとんど存在しない。フリーな溶媒が多く存在すると、グラファイト電極に溶媒とLiイオンが共挿入するのに対して、フリーな溶媒が少ない場合には溶媒の共挿入が抑制されることが分かった。このことから、電解液中の塩濃度だけではなくLi塩のアニオンも濃厚電解液の電気化学特性に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。 また、スルフォランを溶媒に用いた電解液では、リチウム塩を高濃度にすることにより、Liイオンの特異的な輸送現象が起きることを実験的に明らかにした。 Li塩を溶解させたドメチルスルフォキシド溶液をリチウム空気二次電池に適用したところ、空気極の反応中間体であるLiO2の溶解度がリチウム塩濃度の増大とともに低下し、これによりリチウム空気二次電池内における副反応を抑制できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従い、溶媒和イオン液体やこれと類似の物性を示す濃厚電解液における特異なイオン輸送現象や電気化学反応過程を明らかにし、着実に研究成果が出てきている。また、実験および計算化学の両面から溶媒和イオン液体や濃厚電解液の特異性に関して解析を進めることで計画通りに研究が進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
グライム類を溶媒としたリチウム系およびナトリウム系の溶媒和イオン液体に関する研究を継続するとともに,グライム類以外の溶媒を用いた濃厚電解液に関する研究も積極的に推進し、溶媒和イオン液体の概念の拡張を継続する。また、溶媒和イオン液体中におけるイオン-溶媒間の相互作用、カチオン-アニオン間の相互作用が液体の構造および物性に及ぼす影響を実験、計算の両面から解析を進め、溶媒和イオン液体の学理の構築を進める。また、溶媒和イオンの中心金属イオンをマグネシウムやカルシウムへ変化させた溶媒和イオン液体の創製とその応用についても検討を進める。
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