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2016 年度 実績報告書

有機物挿入銅酸化物超伝導体ジョセフソン接合デバイス開発

研究課題

研究課題/領域番号 15H03875
研究機関長岡技術科学大学

研究代表者

末松 久幸  長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (30222045)

研究分担者 藤本 晶  沼津工業高等専門学校, その他部局等, 校長 (10238610)
加藤 孝弘  長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (10432098)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード超伝導 / 高圧合成 / 結晶成長
研究実績の概要

Sr2Ca(n-1)CunOy(02(n-1)n) 結晶への有機分子挿入とこのデバイス化を目的として、実験と数値計算による研究を行った。具体的には、0212試料の酸素量精密と臨界温度測定、中性子回折による結晶構造解析、MOPAC法による0212結晶内の安定な有機物分子位置の計算、および0212結晶の取り出しとその組成分析を行った。まず、高圧合成直後の0212結晶の中性子回折図形が、理想的な0212構造のSrO面間にHまたはOH-基を含んでいた構造を使ったリートベルト解析結果とよりよく一致することが判明した。次に、0212構造に有機分子を挿入した際のエネルギーの数値計算結果は、OH-を含む構造が最も安定するが、その際のc/2軸長は理想的な0212構造に比べて0.012nmしか伸長しないことが予想された。これが、これまでのX線回折や電子回折による分析でHやOH-の存在が判明しなかった理由と考えられた。一方、既に分かっている常圧での02(n-1)n相への水分子挿入においては、粘土鉱物中の結晶水のような形態を形成しているとの仮説を提唱した。また、02(n-1)n結晶の成長条件探索のため、超高圧装置による徐冷を行った。実験の結果、5.5GPa1200-1150℃で15時間合成・徐冷した試料が最も結晶が成長し、大きさ100μmの0212結晶を得ることが出来た。これらにより、デバイス用0212結晶の結晶構造解明と、その成長条件を見いだすことに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Sr2Ca(n-1)CunOy(02(n-1)n) 結晶への有機分子挿入とこのデバイス化を目的として、研究計画調書における下記の研究を行った。
(1)02(n-1)n への水分子、炭酸ガス分子挿入 平成27年度に確立した高圧下における0212合成とCaサイトのSr置換条件を下に、試料の作製を行い、そのヨウ素滴定と熱天秤による酸素量と、SQUID磁束計による臨界温度の測定を行った。この結果により、酸素調整により0212がオーバードープからアンダードープ状態までの試料を調製できる方法を確立した。また、オーストラリア原子力科学技術機構での中性子回折結果をリートベルト解析した結果、SrO面間にHを挿入した方がよりよいフィッティングになることが判明した。
(2)02(n-1)n への挿入有機分子の計算 MOPAC法により、0212のSrO面間に、[100]および[110]方向からH+、H2OおよびOH-基を近づけていった際のエネルギー変化を計算した。この結果、OH-を[110]方向から近づけた際に、SrO面間で安定な配置をとり、c/2軸長が0.012nm伸長することが分かった。これは水分子吸着時の伸長である0.28nmよりかなり短かった。上記の中性子回折でHがSrO面間に存在していたことも加味すると、高圧合成直後の0212相にはすでにHが挿入されてHm212相とも言うべき状態にあり、その後の水分子の挿入により結晶水として存在するのではないかとの仮説が提案された。
(3)02(n-1)n 結晶への有機分子挿入 高圧下での0212結晶の成長条件を探索した。この結果、5.5GPa、1200-1150℃、15時間徐冷の試料から、長さ100μmの結晶を取りだした。走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析の結果、Sr:Ca:Cu=46:19:35と、0212組成に近い値であった。

今後の研究の推進方策

平成28年度実施項目では、(1)-(3)すべての項目で、予定通りの実験・計算が行われた。特に(1)では、0212相の結晶中Hが存在していること、(2)では、OH-基が侵入しても格子定数がさほど変わらないことなど、予想しなかった結果が導き出された。
平成29年度には、Ba置換した02(n-1)n結晶の高圧合成を行い、既に報告されている水分子以外の炭酸ガス分子などの挿入を行いうる試料を作製する。さらに、FIB加工装置を用いて、02(n-1)nのデバイス化のための微細加工を行う。また、オーストラリア原子力科学技術機構との共同により、02(n-1)n単結晶のX線構造解析により、原子位置を精密化する。これらにより、02(n-1)n結晶を実現しデバイス化に資することを目的として研究を遂行する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件)

  • [国際共同研究] Aalto University(Finland)

    • 国名
      フィンランド
    • 外国機関名
      Aalto University
  • [雑誌論文] Synthesis and Superconducting Properties of Sr2(SrxCa1-x)Cu2Oy (x=0-0.75)2016

    • 著者名/発表者名
      S. Shinoda, T. Aoba, T. Suzuki, T. Nakayama, H. Suematsu and K. Niihara
    • 雑誌名

      Jpn. J. Appl. Phys.

      巻: 55 ページ: 02BC16

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Pressure-induced Phase Transitions of Hexagonal Perovskite-like Oxides2016

    • 著者名/発表者名
      T. Aoba, T. Tiittanen, H. Suematsu and M. Karppinen
    • 雑誌名

      J. Solid State Chem.

      巻: 233 ページ: 492-496

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Superconducting Water Derivatives of Sr2Can-1CunO2+2n-d (n=2-4) High-Tc Superconductors2016

    • 著者名/発表者名
      T. Aoba, T. Suzuki, T. Nakayama, H. Suematsu, K. Niihara and M. Karppinen
    • 雑誌名

      Mater. Chem. Phys

      巻: 177 ページ: 67-72

    • 査読あり

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公開日: 2018-01-16  

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