近赤外光領域にエネルギーギャップ(Eg)をもつ半導体ナノ粒子は、幅広い光吸収領域をもつために、太陽電池の光吸収層として活発に研究されている。また低コスト製膜プロセスとして、半導体ナノ粒子を電極上に塗布して薄膜化する液相プロセスが注目されている。そこで本研究では、Egが近赤外光領域で連続的に変化させることが可能であるZnTe-AgInTe2固溶体(ZAITe)ナノ粒子を用いて半導体ナノ粒子薄膜を作製し、さらにその表面を異なる半導体層で被覆することによってヘテロ接合を形成させ、光電気化学特性の向上を目指した。 ZAITeナノ粒子は対応する金属酢酸塩とトリ-n-オクチルホスフィンに溶解させたテルルを1-ドデカンチオールに加え、180 ℃で熱分解することにより作製した。得られたナノ粒子を1-ヘキサンチールに分散させ、ITO基板上にスピンコートし、窒素雰囲気下350 ℃で加熱することで、ナノ粒子を基板に固定させた。さらに、ヘテロ接合界面形成のため、In2S3層をZAITe薄膜上へ化学浴析出法により形成した。 ZAITeナノ粒子は、いずれの組成においても、およそ長軸が16 nm、短軸が4 nmのロッド形状であった。ナノ粒子の吸収スペクトルは、Zn含有率の増加とともに1000 nmから800 nmへと短波長シフトした。ZAITeナノ粒子をITO上に塗布・加熱することで、膜厚約200 nmの半導体ナノ粒子薄膜をえた。電子捕捉剤としてEu(NO3)3を含む溶液にZAITe薄膜を浸漬して光照射するとカソード光電流が得られ、p型半導体に類似した光応答を示した。さらにZAITe薄膜の上にn型半導体であるIn2S3層を積層したところ、ヘテロ接合界面が形成されて光電流は大幅に増大した。
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