研究課題/領域番号 |
15H03878
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
中戸 晃之 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (10237315)
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研究分担者 |
川俣 純 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (40214689)
岩井 俊昭 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80183193)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ材料 / ナノシート / 液晶 / 光操作 |
研究実績の概要 |
本研究は、層状結晶を剥離させて得られるナノシート液晶について、光操作によって、液晶の自発配向やマクロな電場配向では不可能な様式をもち可動な構造形成を行わせることである。本年度は、光操作に影響する試料側のパラメータを明らかにし、次いでナノシートのドメイン単位での操作をめざした。 (1) 光操作の必要条件 ニオブ酸のナノシート液晶を用いて、液晶の相挙動と光操作の可否との関係を調査した。ナノシート液晶は、ナノシート濃度の上昇にしたがって等方相単相から等方相-液晶相2相共存さらに液晶相単相へと変化する。濃度一定でナノシート粒径を大きくした場合も同様の変化を示す。平均粒径1.6ミクロンのナノシートを用いて濃度の影響を調べたところ、等方相-液晶相2相共存のとき(5-40 g/L)のみ光による液晶の配向変化が観察された。濃度を同程度(5-10 g/L)にして平均粒径を変化させたときは、0.5ミクロンで等方相単相、5.5ミクロンで液晶相単相となったが、これらはいずれも光による配向変化を示さなかった。これらより、ナノシート液晶の光操作には、液晶の相挙動が重要な影響を与えると言える。 (2) 光操作による配向変化の消長 ニオブ酸ナノシート液晶にレーザー光を継続照射したときの構造変化を偏光顕微鏡で追跡した。配向変化はレーザー光の焦点近傍で起こり、微小な複屈折ドメインを生じるが、継続照射によって複屈折部が周縁部に拡大し、焦点サイズよりも大きなドメインへと成長することがわかった。これまでのコロイド粒子の光操作では見出されていない現象で、ナノシートが液晶を形成していることによる協働効果によるものと思われる。一方、光操作後にレーザー光を遮断すると、光操作による配向変化は速やかに緩和され消失した。これより、光操作による液晶への欠陥導入と消去が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の予定をおおむね達成したため。当初は液晶のドメイン単位での光操作を狙っていたが、光操作によって液晶内にドメインが新たに形成・成長する現象を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
ナノシート液晶に特有な焦点周縁への構造成長と、入射レーザー光の形状制御とを組み合わせ、光操作によるナノシート液晶の動的構造形成を多様化させる。特に、円偏光やスパイラル光などによるキラル構造の実現をめざす。また、ピンセットの多点化することで、系への周期構造の導入を試みる。さらに、光操作によって構造形成させたナノシート液晶の機能を検討する。具体的には、光触媒活性をもつ半導体ナノシートの液晶に光操作によって構造形成させ、光触媒反応性の差異を調査する。
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