1) リング状シロキサンの合成と分離膜応用 12員環構造のメチルシロキサンのアルコキシシリル誘導体の加水分解・重縮合反応によって得られるゲル膜(H27年度報告)のガス分離性能について調査を行い、一定の分子ふるい効果を示すことを確認した。一方、より明確な内部空間の構築を目的として、剛直なかご型シロキサンオリゴマーをビルディングブロックとして用いた環状状構造体の合成に取り組んだ。立方体形状のかご型シルセスキオキサンH8Si8O12に対して、水酸基を二つ有する有機化合物を反応させることによって、8つの頂点Si-H基のうち隣接する二つを位置選択的にSi-O-C結合に変換することに成功した。この化合物は、Si-O-C結合の加水分解と分子間重縮合によって環状構造体を形成することが期待できる。 2) 自己組織化による中空状構造体の合成 両親媒性の6員環シロキサンの設計と自己組織化について検討した。親水基としてトリエトキシシリル基(-Si(OEt)3)、疎水基としてオクチル基(炭素数n = 8)を導入した分子(H27年度報告)からは、低規則性のメソ構造体が得られた。そこで、分子集合能力向上を目的として、n = 12およびn = 18のアルキル鎖の導入を行った。これらの分子の加水分解・重縮合反応と、溶媒揮発にともなう自己組織化によって、ラメラ構造体が形成されることを示した。当初目的としていた逆ミセル型の中空ナノ粒子は得られなかったが、二次元シート状に環状シロキサンが配列、連結された新材料として、分離膜などとしての展開が期待される。 3) 分子テンプレート法によるナノポアの創出 Si-H基を有するかご型シロキサンの一つの頂点に、ナノポア形成のためのテンプレートとなるかさ高い有機基をSi-O-C結合によって導入する手法を確立した。
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