研究課題/領域番号 |
15H03885
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宮前 孝行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 主任研究員 (80358134)
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研究分担者 |
阿澄 玲子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 副研究部門長 (40356366)
宮寺 哲彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 太陽光発電研究センター, 研究員 (30443039)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機デバイス / 有機薄膜太陽電池 / 有機トランジスタ / 分子配向 / 界面 |
研究実績の概要 |
有機太陽電池や有機トランジスタの高効率化に向けて、デバイス動作時における界面での電荷挙動のその場解析と電荷輸送に関わる分子配向秩序の相関を探るために、界面選択的な分光法である和周波発生(SFG)分光法により有機薄膜界面の分子配向とデバイス駆動時の電荷挙の解析を進め、分子配向秩序と電荷輸送との相関を明らかにすることを目的とする。 本年度は配向秩序解析のための光学系の改良を進める予定であったが、SFG分光に用いるパルスレーザーの故障により十分な測定を進めることができなかった。平成27年度末に新たにレーザー本体を更新し、装置全体の最適化を進めている。また、有機化合物の電子励起に共鳴させて、SFG信号の増強を行う二重共鳴SFG分光に用いる可視励起光の波長領域を拡張するための2倍波発生ユニットを新たに導入し、レーザーの調整とともに波長領域の拡大を進めている。 分担者の宮寺は、製膜制御技術開発において重要なプロセスである、真空蒸着法による有機半導体材料の製膜制御に取り組んだ。近年研究が盛んな有機鉛ペロブスカイトにおいては真空蒸着による製膜制御が難しいとされてきたが、これまでに開発したレーザー蒸着法によって製膜制御を実現している。特に水晶振動子膜厚計の膜厚検出機構にモードロック方式のコントローラを導入することで膜厚測定の精度、確度を格段に向上することができた。これにより有機鉛ペロブスカイトの製膜の制御性がさらに向上したため、界面物性測定に適した試料を構築することが可能となった。 分担者の阿澄は界面の情報を得る前段階として、ポリ(ヘキシルチオフェン)の摩擦転写膜の、薄膜内での分子の平均的な面外配向の状態を赤外分光法により評価した。製膜時の温度50℃および100℃では分子平面は基板面にほぼ平行に配向しているが、製膜温度150℃では若干edge-on配向をとっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度当初に、SFG分光用のレーザーが故障し、実験を十分に遂行することが困難になった。幸いレーザーを更新することが可能になったため、27年12月にレーザー本体をこれまで使用していたフラッシュランプ励起パルスレーザーから、LD励起ピコ秒パルスレーザーに交換し、調整を進めてきた。現在のところSFG測定に必要な赤外波長可変ユニットおよび二重共鳴測定に必要な波長可変ユニットの調整がおわり、標準試料を用いたテスト測定を進めている。また計画当初にあった、パルス電圧印加による有機デバイスの電荷挙動の時間応答測定に関しても、レーザーの調整と同時に進めており、プログラム整備がほぼ終わり、テスト試料による測定を順次進めている段階である。 有機トランジスタに関しては界面の情報を得る前段階の比較対象として、ポリ(ヘキシルチオフェン)の摩擦転写膜の、分子の平均的な面外配向状態の評価を赤外分光法により進めている。偏光赤外光を薄膜に対して斜めに入射したときの、チオフェン環CH伸縮振動、および側鎖アルキル基のCH伸縮振動の強度を種々の製膜条件で比較することで、配向薄膜における分子の配向を解析した。摩擦転写による製膜温度が50℃および100℃ではチオフェン環の分子平面は基板面にほぼ平行に配向しているが、製膜温度150℃では若干edge-on配向をとっていることが示唆された。 太陽電池材料に関しては、真空蒸着法による膜の精密制御を試みており、特に水晶振動子膜厚計の膜厚検出機構にモードロック方式のコントローラを導入することで膜厚測定の精度、確度が格段に向上することを見出した。これにより有機鉛ペロブスカイトの製膜の制御性がさらに向上したため、界面物性測定に適した資料を構築することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
SFG分光装置用に新たに導入したレーザーの調整がほぼ終了したので、本年度は当初の計画にあった、SFG分光による機能性有機材料薄膜の分子配向の測定と、電界誘起SFG分光による有機デバイスにおける界面の電荷挙動の解析を進めていく。有機トランジスタにおいては、前年度に赤外分光による定性的な解析から、配向状態の異なる試料調整方法を見出しており、今年度は2重共鳴SFG分光を用いて、配向試料の分子配向の解析とデバイス特性評価との相関を詳細に調べていく。また太陽電池材料については秩序制御した薄膜試料に関して、2重共鳴SFG分光を用いた薄膜界面の電子状態解析を行っていく予定である。 さらに今年度は新たにパルス電圧印加による有機デバイスの電荷挙動の時間応答測定に関して、実デバイス構成の試料を用いた測定を試みていく。このために必要な測定プログラムやパルス電源の整備を進め、まずは有機EL素子などを用いてのパルス電圧応答による素子内の電荷蓄積状況の時間応答SFGの測定を進めていく。
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