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2016 年度 実績報告書

超平坦SiC表面上へのプラズマ援用化学アニールによる未踏の低欠陥グラフェンの形成

研究課題

研究課題/領域番号 15H03902
研究機関大阪大学

研究代表者

有馬 健太  大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10324807)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードグラフェン / プラズマ酸化 / SiC表面 / 構造制御
研究実績の概要

グラフェンとは、単原子層の厚さを有する炭素(C)原子の二次元ネットワーク(シート)である。グラフェンは、非常に優れた電気的・機械的・磁気的性質を持つことが予測されており、超高性能電子デバイスにおけるチャネル材料や透明電極材料など、将来の科学技術において鍵となる材料である。しかし、シリコンカーバイド(SiC)表面に形成されるグラフェンの電子移動度は、予想される理論値を大幅に下回る。これは、SiC表面に凹凸(ピットやマルチステップ、スクラッチに代表されるnmオーダーの段差)が存在し、その上に成長するグラフェンに断裂等の微小な構造欠陥が導入されるためであり、次世代の電子デバイス産業が解決すべき大きな課題である。
本研究の目的は、原子レベルで超平坦に研磨された独自のSiC表面に、プラズマプロセスとアニール処理を組み合わせることにより、他に例の無い低欠陥グラフェンの形成を目指すことである。
本年度は、SiC表面に、ヘリウムやアルゴン、水素や酸素を原料ガスとしたプラズマを照射した。そして、SiC表面のC原子とシリコン(Si)原子の濃度比(C/Si比)をX線光電子分光法により調べると共に、SiC表面の濡れ特性や表面構造の変化を観察した。これにより、プラズマ/SiC間での化学的な相互作用を明らかにした。ここで、反応を促進するために、プラズマは通常のTorr領域の低圧力ではなく、大気圧近傍の高い圧力とした。また、このC/Si比がプラズマ条件(ガス組成、流量比、圧力 等)によってどう変わるかを調査した。次に、プラズマ照射時や照射後に試料を昇温し、得られる表面の構造や電子状態をラマン分光測定や走査型プローブ顕微鏡により観測した。これにより、欠陥フリーのグラフェンを形成するためのプラズマ照射条件の探索を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた、ヘリウムやアルゴン、水素や酸素を原料ガスとしたプラズマをSiC表面に照射する実験を進め、SiC表面のC原子濃度を分子層レベルで制御する手法にめどがついた。特に、SiC表面をプラズマにより酸化し、その酸化膜をウェットエッチングにより除去する独自のアプローチにより、通常の熱酸化では得られないようなSiC表面が形成できることを見出し、その形成メカニズムについて理解を深めることができた。以上により、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

現在、得られたグラフェンの性能評価は、ラマン分光測定やプローブ顕微鏡測定に留まっている。しかし、実際に得られたグラフェンを電子デバイスに応用するためには、その電気特性を把握する必要がある。今回のグラフェン形成には、SiC表面の通電過熱を利用しているため、導電性を持つSiC表面を用いている。そのため、ホール効果測定などでグラフェンの電気特性を測定する際には、SiC上から別の絶縁性基板上に転写する必要がある。今後は、グラフェンの転写技術と共に、転写したグラフェンの原子構造を計測・評価する手法の開発を並行して進め、電気特性測定につなげていきたいと考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Chemical etching of a semiconductor surface assisted by single sheets of reduced graphene oxide2018

    • 著者名/発表者名
      Hirano Tomoki、Nakade Kazuki、Li Shaoxian、Kawai Kentaro、Arima Kenta
    • 雑誌名

      Carbon

      巻: 127 ページ: 681~687

    • DOI

      10.1016/j.carbon.2017.11.053

    • 査読あり
  • [学会発表] Surface Modification of SiC by Plasma Oxidation to Form Graphene/SiC Structure with Low Pit Density2018

    • 著者名/発表者名
      K. Arima, R. Ito, O. Minami, K. Hosoo, Y. Sano, and K. Kawai
    • 学会等名
      45th Conference on the Physics & Chemistry of Surfaces & Interfaces
    • 国際学会
  • [学会発表] プラズマ酸化を援用して形成した低欠陥密度グラフェンの構造評価とその起源2018

    • 著者名/発表者名
      南映希、伊藤亮太、細尾幸平、佐野泰久、川合健太郎、有馬健太
    • 学会等名
      第23回電子デバイス界面テクノロジー研究会
  • [学会発表] Plasma-assisted Oxidation of SiC Surface to Assist Forming Graphene with Low Pit Density2017

    • 著者名/発表者名
      Ryota Ito, Kohei Hosoo, Ouki Minami, Mizuho Morita, Yasuhisa Sano, Kentaro Kawai, Kenta Arima
    • 学会等名
      The 8th International Symposium on Surface Science
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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