研究課題/領域番号 |
15H03916
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
肖 鋒 東京工業大学, 工学院, 准教授 (50280912)
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研究分担者 |
功刀 資彰 京都大学, 工学研究科, 教授 (40301832)
高田 尚樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (60357358)
山下 晋 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (80586272)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 数値流体力学 / 多相流 / 自由界面流れ / 非構造格子 / 計算手法 |
研究実績の概要 |
実用性の高い汎用非構造格子自由界面多相流数値モデルの構築及び検証に向けて研究を進めている。 平成28年度においては, 任意形状におけるTHINC多次元補間関数に自由界面の二次曲面表現の定式化を新たに提案した。それに基づく有限体積法の定式化による運動量の移流計算の保存型数値解法を開発した。これによって密度差の大きい多相流問題の計算精度が大きく改善された。また,表面張力や重力など外力の計算についてBalanced forceの定式化を開発した。表面張力が支配的であるマイクロスケール多相流の計算に伴う擬似流れを防ぐことに成功した。これらの新規開発した計算モジュールを取り入れたVPM法とTHINC法を基軸とする多相流数値モデルを構築した。さらに,数値流体力学解法の散逸誤差を改良するため,BVD(Boundary Variation Diminishing)原理を提案した。この原理は,多相流計算に限らず,高性能有限体積法の開発における普遍的な指針として,関連分野の今後の発展に大きく影響を与えるものである。数値モデルの検証用ベンチマーク実験データセットを構築するために,産総研との共同研究でマイクロスケールの複雑流路内の自由界面多相流に関する実験を行った。T字型及びFlow Focusing 型のマイクロチップを作成し,水を連続相,シリコンオイルを分散相としたマイクロドロップレットの生成実験を行い,様々な条件における画像データを取得した。これらの実験データを用いて前述の数値モデルの検証を行った結果,本研究で開発した数値モデルが実現象をよく再現できることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度の研究目標は,主に以下の三点を計画していた。①自由界面を持つ多相流数値計算モデルの構築に極めて重要である運動量の計算及び表面張力など外力の数値定式化の開発。②VPMとTHINC法を基盤とした数値モデルの構築。③数値モデル検証用の実験データセットの整備。前述の研究実行報告の通り,当初の研究計画を達成したうえ,BVD原則の提案など従来計画に盛り込まれていない研究成果も得られている。一部の研究成果はすでに国際英文学術誌に投稿し,掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究成果をもとに平成29年度において主に次の方面に研究を遂行する予定である。 ・引き続き非構造格子における保存型マッハ統一自由界面多相流モデルを構築する。自由界面近傍の圧力振動問題について陽解法および前処理による定式化の目処を立てたので,プロジェクション法に基づく統一解法の開発を行う。 ・表面張力に関わるBalanced forceの定式化を圧縮性モデルへの適用を行い,高速流れにおける自由界面多相流の検証および数値実験を展開する ・引き続き検証用多相流実験データを用いて数値モデルの検証を行い,改良する。前年度のマイクロ流路における実験研究で得られた結果をもとに開発した数値モデルによるシミュレーションを行う。数値モデルの各モジュールを評価し,改善を行う。 ・平成29年は本研究実施計画の最終年度となる。研究成果を論文としてまとめ,国際的に積極的に発信する。
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