研究課題/領域番号 |
15H03919
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
茂田 正哉 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (30431521)
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研究分担者 |
田中 学 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (20243272)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズマ / 超臨界流体 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、超臨界プラズマ環境におけるナノ粒子の合金化・複合化・有機修飾の手法を段階的に確立し、プラズマの流動特性と合成物の材料特性の相関を明らかにしながら、有機修飾複合ナノ粒子のワンステップ合成の実現を目指す。そこで平成27年度は、まず超臨界状態の二酸化炭素を生成・維持するための耐圧チャンバーと超高圧環境下においてもプラズマの発生が可能な電力供給ユニットを組み合わせた実験システムの設計および製作を行った。プラズマの発生および維持のためには高電圧を要するため、液中においてもプラズマ生成の可能な高電圧パルス放電用電源を組み入れた。また実験装置の設計・製作と並行して、高速ビデオカメラと分光システムを用いて発光スペクトルから広範囲のアルゴンアークプラズマや二酸化炭素アークプラズマの動的挙動や電離状態を診断し、プラズマ温度等を計測する手法を確立した。また数値シミュレーションに基づいた理論的研究も行い、研究代表者が構築した独自の数理モデルによって、プラズマ環境下でナノ粒子が核生成・凝縮・凝集により集団成長しながらプラズマ周囲において対流・拡散輸送されるプロセスを明らかにした。加えて、前駆体物質の配合および材料間の飽和蒸気圧差が金属間化合物ナノ粒子の集団成長過程に及ぼす影響も明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で開発を目指すプロセスは、超臨界流体中にプラズマを生成し、その特異物質相を利用して、生成量・サイズ・組成(機能)を制御しながら「病変部位への送達性・抗菌性・光触媒活性を併せ持つナノ粒子」をワンステップで大量合成するという新規的で極めて特殊なプロセスである。平成27年度はそのための実験システムのゼロからの立ち上げであったため、その設計には慎重を期す必要があった。上半期の設計段階において当初の製作予定業者から当該のプラズマ生成機構を製作することが不可能であることを通知され、下半期に他業者と共に再び設計段階から開始することとなった。さらに極めて高い気密性が要求される耐圧チャンバーであるため、製作そのものに時間を要し、実験システムの納入が当初の予定より遅れたことが理由である。粒子合成について遅れてはいるが、二酸化炭素の超臨界化と瞬間的なプラズマの生成には成功した。しかし超臨界二酸化炭素という極めて活性な場におけるプラズマの影響で電極の消耗が速く、安定的にプラズマを維持することができていないのが現状である。その一方で、並行して進めていたプラズマ画像分光計測システムの確立と理論的研究の方は概ね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず電極部の改良および圧力調整を行い、超臨界環境下でのプラズマの安定的な維持を目指す。またコロナ放電に類似した局所的なプラズマ相の温度を計測するために温度計測法も改良する。それらと並行して現有のシュリーレン計測システムを適用して密度場を計測することで流動場の構造を明らかにする。合成物については、電子顕微鏡(SEM, TEM)を用いた粒径・形状観察とX線回折(XRD)を用いた組成分析により物質の同定と特性評価を行う。また理論的研究アプローチも継続し、超臨界プラズマ流動場におけるナノ粒子の形成メカニズムを明らかにするために平成27年度に構築した数値計算モデルの拡張を行う。形成されるナノ粒子は集団的に相互作用しながら成長し、それらの直径はサブナノメートルから数百ナノメートルに及ぶため、マルチスケール性を取り扱うに足る高性能の計算機を導入して数値計算を行う。加えて、超臨界状態のプラズマ相を表現できる数理モデルは現在のところ皆無であるため、モデリングに向けて物理化学に基づく理論構築を行っていく。
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