研究課題/領域番号 |
15H03920
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
冨山 明男 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30211402)
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研究分担者 |
細川 茂雄 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10252793)
林 公祐 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60455152)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 混相流 / 気泡塔 / スラリー |
研究実績の概要 |
天然ガス有効利用技術として期待されている天然ガス液化技術やジメチルエーテル直接合成技術では,Fisher-Tropsh合成反応塔,すなわち微粒子を固体触媒とする高気相体積率・高粒子濃度スラリー気泡塔の開発が要となる.本研究では,気泡塔スケールアップに活用できる数値予測技術の開発を目的とし,以下の3つの要素研究を実施している.①高気相体積率流れの予測に不可欠な大気泡抗力係数相関式の開発,②塔径・塔高・散気方法・粒子濃度・気相流量・流体物性・物質輸送の有無をパラメタとする気泡塔内流動実験データの取得,③高気相体積率・高粒子濃度気泡流計算技術の開発.平成27年度は,①について,大気泡抗力係数相関式を作成するため,並行平板間内スラリー気泡流中大気泡運動観測装置を製作するとともに,まず水空気系での大気泡運動に関するデータベースを取得した.②について,初期液位・塔径・気相みかけ速度・スラリー濃度などをパラメタとして,気泡塔内流動状態や気相体積率のデータベースを取得した.また,そのデータに基づいて気相体積率の整理に適した無次元パラメタを検討し,上記パラメタの幅広い範囲において気相体積率を良好に評価できる相関式を得た.また,気泡に働く各種流体力や物質移動係数などの評価に不可欠な高精度気泡形状相関式を作成した.さらに,低流量でも一様な散気を実現できる極めて簡単な散気制御方法を見いだした.③について,多流体モデル-界面追跡法ハイブリッドモデルを用いて②の気泡塔実験にあわせた数値予測を行い,①,②の実験結果との比較により,本モデルにおいて拡張が必要な点(大気泡の抗力及び連続気相への合一過程の取り扱い)を明確にするとともに,その拡張のための指針を得た.また,界面活性剤が気泡運動に及ぼす影響を考慮した既開発計算技術について,汚染が中程度な場合にはその影響を高精度に評価できないことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に記載の通り,本研究は3つの要素研究に分類してそれぞれを並行に進めているが,いずれも当初の研究計画に沿って概ね順調に進展している.すなわち,要素研究①では大気泡運動観察装置の製作,水空気系大気泡運動に関するデータの取得,②では気泡塔内流動・気相体積率の各種パラメタ依存性に関するデータベースの構築及び気相体積率相関式の作成,③では①及び②の結果を踏まえた数値予測技術の改良指針の取得を終えており,平成28, 29年度の計画に円滑に移行し,最終的には当初の目標に到達できる見込みである.以上より,(2)おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
要素研究①について,初年度の製作した並行平板間スラリー気泡流中大気泡運動観察装置を用いて,平成27年度の水空気実験に関する実験データ,すなわち大気泡上昇速度・気泡形状・気泡周囲液相分布等のデータを補強する.その後,当初の計画に基づき,構築したデータベースに基づき,大気泡抗力係数相関式の開発,安定性理論の安定限界径を超える大きさの気泡が安定に存在する理由の考察へと進める.小気泡体積率や液相物性もパラメタとして考えているが,本実験データに基づいて大気泡の数値的な取り扱い方を開発していく上で,必要に応じて体系を簡略化するなどの対応策も検討している. 要素研究②について,真にスケールアップに役立つ気相体積率等の塔内流動データベース及び気相体積率相関式を構築するため,平成28年度はさらに,塔径や散気板が気相体積率に及ぼす影響を明らかにし,これらの影響が認められる場合は,その影響を考慮できるように初年度に構築した相関式を拡張する.本実験では,要素研究③を推進するため,上昇速度などの塔内大気泡に関するデータも取得する.各種塔内流動データの計測には,既 開発のボイドプローブ,液浸型レーザドップラ流速計などを活用するが,既開発技術のみで不足する場合は必要に応じて計測技術の改良を行い問題を解決する. 要素研究③について,①で開発する大気泡抗力も出るをハイブリッド計算手法に組み込み,高気相体積率・高粒子濃度の固気液三相多分散気泡流計算手法を構築する.安定かつ高精度な数値予測の実現のため,大気泡と液相間の運動量輸送や大気泡から連続気相への質量輸送を適切にモデル化する必要がある.本年度はこれらの点についてモデル化を進めて行く.モデリング上必要な情報が不足した場合には,①,②の実験装置を用いた追加実験により情報を取得して解決していく.
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