研究課題
近年,衝撃波を血管や神経などの再生医療へ応用する分野が広がってきているが,本研究においては,3Dプリンターを利用した臓器作成機器の衝撃波による促進方法を念頭におき,気泡と再生すべき細胞を含んだマイクロカプセルで組織形状を作り,外部から衝撃波を作用させてカプセル内の細胞への物理的刺激と増殖後のカプセル破壊の2つのモードをもつ手法の開発を最終目的とする.本課題では,本システムの基礎的な機構解明のため,(1)局所的な衝撃波の発生が可能な時短レーザーを用いて集束によりマイクロ衝撃波を生成し,それぞれの圧力の伝播特性と圧力場を調べること,(2)カプセル膜近傍の気泡と衝撃波の干渉による“カプセル破壊”に至る現象を気泡変形挙動の可視化や圧力計測等によって明らかにして,衝撃波作用の最適化をすること,(3)1個および3D 構造をもつ気泡内包カプセル体の衝撃波の伝播や減衰機構を調べること,を目的とする.まず,再生用母材のマイクロカプセルについては,細胞入り気泡内包マイクロカプセルの試作として,細胞を挿入することを考慮し大きさ(50μm)程度のマイクロカプセルを既存開発のゲル化物質用旋回流型カプセル生成器および,既存開発のマイクロマニュピレーションシステムを改良し,内部に液体とCO2ガスの混合液を封入し,基本部分となる気泡内包カプセル製作が完了している.また,外部圧力波を作用した時の気泡変形挙動の観察とその破壊のしきい値についての設計パラメータとその基礎的変形挙動のモード(破壊・振動など)が得られ.その変形挙動の理論的解析を行い実験との定性的一致を得た.一方の,パルスレーザ衝撃波については,平成27年度に引き続きレーザ機器不良のためビーム径が安定せず,期待されている集束エネルギー密度が低く想定している衝撃波の圧力が得られていない.
3: やや遅れている
平成28年度においては,気泡の大きさと細胞やカプセルの膜の弾性率(物性値)による破膜への影響の観察として,平成27年度に引き続き,時短レーザによる衝撃波生成実験を行ったが,前年度からの再度レーザ機器不良のためビーム径が安定せず,そのため光学レンズによる集束が不十分となり,期待されているエネルギー密度に満たないため想定している衝撃波の圧力波形が得られていない.
フェムト秒レーザ機器(海外ファイバーレーザ製品)については前年度と同じく不調が続いているため,再度製造元で修理している.また,先行している3D組織生成用マイクロカプセルの製作ならびに内部気泡の変形挙動とカプセルとの関係の結果を受け,圧力減衰の計測用の実験モデル系を構築し,このモデルに対して,他の圧力発生装置やフェムト秒よりも長い既存のパルス衝撃波を用いて減衰計測を行うことを行い,フェムト秒との比較を最終年度において合わせることとする.また,これも先行しているパルスレーザ衝撃波発生機構のモデルを,進行している衝撃波伝播計算ならびに気泡による減衰機構を行う予定である.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
ICIC Express Letters, Part B: Applications (An International Journal of Research and Surveys)
巻: Vol.7, No.9 ページ: 2039-2044