研究課題
高度な移植医療,期待の高い再生医療をはじめとする未来医療の技術確立のために,微視的ならびに巨視的な視点からの臓器機能維持,再生,評価にむけた肝蔵内灌流による流動特性を解明することが重要である.特に,虚血再灌流障害として現れる臓器内不均一流動分布特性,血再灌流障害下の流動特性,脈管相互制御機構に着目し,大動物(ブタ)による生体内灌流,体外機械灌流による複合計測実験にあわせ,数値流体解析と局所モデル解析を組み合わせた解析的手法を有機的に併用し,これらを相互に比較検討し解明,評価を実施した.具体的には (A) 臓器内不均一流動分布特性の解明 (巨視的計測・解析)(B) 血再灌流障害下の流動特性評価 (微視的計測・解析)(C) 脈管相互制御機構の解明 (統合的計測・解析)に注目する研究である.当該年度は,臓器内不均一流動分布特性の解明を中心に取り組み,以下の結果を得た.大動物実験による巨視的な複合流動計測:虚血時間の異なる(WIT0,WIT60)条件の臓器の体内灌流,体外機械灌流実験を実施した.独自に開発した臓器体外灌流液循環装置により,肝臓ならびに腎臓に着目し実験をおこなった.圧力や流量,温度変化にともなう酸素,逸脱酵素動態など既存の流動計測手法に加え,温度差流動分布計測法を開発し,他の手法とも組み合わせ低侵襲で流動分布特性を評価した.具体的には,摘出された大動物肝臓を,機械灌流装置に配置し,各種流動条件下で血管内に供給する灌流駅の温度に若干の変動を与え,得られる温度分布,変化情報から流動分布特性を計測する流動分布を計測した.これらの結果から,臓器の機能維持状態としてマクロに得られる流動特性とミクロに発現する流動特性の相互評価が重要であることを示した.これら情報をふまえ,今後研究を発展させることで,臓器の再生に向けた医療技術の開発が可能になると考えられる.
2: おおむね順調に進展している
遅れている備品の導入(当該年度は借用により対応)がなされることにより,次年度一層研究が進展することが期待される.
当該年度の成果をふまえ,複数の研究課題を有機的に取り組むことで一層の研究成果を得られるように体制を整備している.
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
Transplantation Proceedings
巻: 12 ページ: 098
10.1016/j.transproceed.2015.12.098
Organ Biology
巻: 22 ページ: 121-127
10.11378/organbio.22.121
http://www.comp.tmu.ac.jp/organ/