限界熱流束向上には、毛管力により伝熱面に液体が供給される効果および蒸気排出孔への液体の直接流入効果の2つの素過程があるが、その寄与割合は、不明である。そこで本年度はさらなる限界熱流束向上を狙うため、限界熱流束発生メカニズムを素過程に切り分けた要素実験を行い、特に、後者の蒸気排出孔への液体の直接流入効果に着目し実験を行った。具体的には、空気・水系で、実験を行い、空気流量は限界熱流束発生時の蒸気流速を参考に決定した。またハニカム多孔体の蒸気排出孔の間隔をテーラ不安定波長オーダ(cmオーダ)からmmオーダーまで大きく変えて、蒸気排出孔への液体の流入流量を測定した。さらに、蒸気排出孔内部への液流入の様相を直接観察できる装置も別途製作し、高速度カメラを用いて、その様相を詳細に観察した。その結果、限界熱流束を3.5 MW/m2以上に向上させるためには、蒸気排出孔への液体の直接流入効果よりも毛管力による液体供給効果が重要であることが明らかとなった。一方で板厚hが5、10 mmと毛管力による液供給の寄与割合小の場合でも、セルへ直接流入する液体を効率よく蒸発させることができれば、限界熱流束を3 MW/m2程度にまで向上できる可能性があることが理論的に明らかになった。また、セル底部での効率の良い蒸発には、伝熱面上にナノ粒子を堆積させた伝熱面が有効で有り、限界熱流束をより向上させることが可能であることを実験的にも確認した。
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