研究課題/領域番号 |
15H03934
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田口 良広 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30433741)
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研究分担者 |
牧 英之 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (10339715)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 近接場光 / ナノデバイス / 計測工学 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、感温性分子を分子修飾する必要がない、新しい近接場光学熱顕微鏡の開発に着手し、ナノスケールその場温度イメージング技術の開発を行った。具体的な研究成果を下記に示した。 1.超高感度近接場偏光プローブの開発:カーボンナノチューブなどの低次元ナノ材料の場合その形状異方性から、試料によって散乱される近接場偏光は励起光と比較して偏光回転が生じることが分かっている。この偏光回転量は試料の温度に依存性があるため、偏光回転量を測定することで局所的な温度変化を検知する事ができる。近接場偏光回転を高感度に検出するためには、前年度までに用いてきた通常の近接場ファイバ(マルチモード)を用いるのではなく、シングルモードの近接場偏光プローブを開発する必要がある。本年度は、時間領域有限差分法(FDTD)シミュレーションにより近接場偏光回転量と温度依存性を数値解析し、最適なプローブ材質・形状を決定した。また、種々の濃度に調整したフッ酸緩衝溶液を用いてGeドープファイバをエッチングし、微小開口を有する特殊な近接場偏光プローブを作製した。ナノ発光デバイスに適用し提案手法の妥当性を確認した。 2.ナノスケールその場温度イメージング:開発した近接場偏光熱顕微鏡を用いてナノデバイスのその場温度イメージングを行った。まず予備的測定として、Ptナノワイヤーを通電加熱し、提案手法の妥当性を検証した。想定する次世代ナノ発光デバイスはカーボンナノチューブの集合体であり、配向性はランダムである。近接場偏光熱顕微鏡を適用するためには、新しいキャリブレーション方法を提案する必要がある。そこで、偏光板を自動的に回転させスキャンごとに偏光状態をキャリブレーションする方法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた近接場光学熱顕微鏡の開発については研究計画に沿って順調に進んでいる。一方、現在までにナノ発光デバイスの開発に着手し、カーボンナノチューブを用いた微小発光デバイスの開発に成功した点は、当初の計画以上に進展しているといえる。作製したナノ発光デバイスを用いて通電加熱実験を行い、発光部分の温度上昇を観察することに成功した。また、近接場光学熱顕微鏡を用いて温度分布変化をセンシングすることに成功した。近接場蛍光を用いたセンシング手法については、70 nm開口を有するプローブの開発に初めて成功し、超高空間分解能温度センシングの実現を果たした。以上より、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(最終年度)は当初の予定通りに、ナノデバイスの温度分布測定における測定感度と時間分解能の飛躍的向上を目指す。具体的には(1)新しい近接場ファイバープローブの確立と安定した制御手法の開発、(2)Ptナノワイヤを用いた時間分解測定の妥当性検証を行う予定である。
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