研究課題/領域番号 |
15H03939
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
吉村 卓也 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (50220736)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 振動騒音低減 / 時刻歴応答 / 感度解析 / 構造変更 / モード解析 |
研究実績の概要 |
構造設計においては振動応答を低減することが重要であり,このためには周波数領域で応答特性を評価することが一般的である.一方,構造設計においては周波数領域の評価だけでなく,時間領域の特性,特に過渡応答が最大となるピーク(例えば最大変位,最大加速度,最大音圧等)に着目した対策が求められる場合も多い.特に過渡応答において単一モードが卓越している場合は固有モードの応答低減が主眼となるが,複数のモードが寄与する場合には固有モード間の位相も関わってくるために対策法が明確でなく有効な手法が必要とされていた. 申請者はこのための構造変更検討法として感度解析を時間領域に拡張し,時刻歴応答のピーク低減のための感度解析法を提案しその有効性を示している.提案手法は周波数領域で得られる感度に対して逆フーリエ変換を用いて時間領域に変換し,任意時刻の応答波形の感度を得てそこからピーク時刻の感度を求める方法である.時間領域と周波数領域の関係が明らかになったことにより,周波数領域における感度解析の適用範囲を拡大することが時刻歴波形に対する適用範囲の拡大にもつながることが分かり,このことを踏まえて実験計測に基づく感度解析法に関する多角的な検討を進めている. 例えば放射音低減においてはパネルなどの曲げ振動を低減することが重要であり,そのために従来の加速度計測だけではなく,ひずみ測定を活用した感度解析などに応用展開させている.また,構造対策においては質量,剛性の特性だけでなく,減衰特性の検討も重要であることから,防振材・防音材の最適配置に関する基礎的な検討も進めてきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度までに達成された内容を述べる. (1) 周波数領域感度と時間領域感度の関係性の確認,(2)ひずみ計測に基づいた曲げ剛性付加感度解析の有効性の確認,(3)未知入力に対する振動騒音低減法の有効性の確認,(4)感度を構造物の寄与と考える方法の有効性確認.(5)防振材の振動音響特性に与える影響調査,等である.(2)のひずみ計測による剛性付加感度解析については,概ね良好な結果を得ているが,例えば板のねじりモード等においては,ひずみ計測でせん断ひずみを評価することが難しいため,感度解析により適切な構造変更箇所を見出すことが難しい場合があることが分かった.また,(5)の防振材については,現時点では適切なモデル化が難しいため,まず防振材(防音材)を付加した場合の振動音響特性の影響調査を行い,その結果を踏まえて,モデル化に結び付けたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
主な実施予定を下記に示す. (1) ひずみ測定におけるねじりモードへの対応:曲げ剛性評価においてひずみ計測が有効であることを確認することができたが,例えばねじりモードのような場合には有効でない場合があった.このような場合の対応について引き続き検討を進める. (2) 防振材の付加による振動音響特性に対する影響評価:構造設計において減衰特性の最適化を図ることも重要であり,重量低減の観点からは効果を最大化することにより使用量を削減することが可能になる.これを検討するためには,防振材・防音材の特性を適切に表現するモデル化技術が必要となる.このモデル化に関しても引き続き検討を進める. (3) 逆フーリエ変換の誤算評価:提案法は感度解析に逆フーリエ変換を当てはめることにより,時刻歴応答の感度を算出している.この逆フーリエ変換における誤差評価について,引き続き検討する. 以上について推進し,その成果をまとめる予定である.
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