研究課題/領域番号 |
15H03940
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
峯田 貴 山形大学, 理工学研究科, 教授 (50374814)
|
研究分担者 |
小池 邦博 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (40241723)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | デュアルAFMプローブ / 近接探針 / 中空カンチレバー / 磁歪薄膜アクチュエータ / 液体デリバリ |
研究実績の概要 |
単結晶シリコンの超微細トレンチ加工と結晶異方性エッチングによる自己整合加工プロセスを基盤として、新たに鋭角のマスクパターン配置を考案して幾何学的に先鋭な形状のデュアルAFM探針形成プロセスを確立し、さらに低温熱酸化法により先端曲率半径を数nm以下に先鋭化する最適条件を見出した。また、電子線レジストマスク形成とエッチング条件を適正化し、探針先端間を500nm以下に抑制した近接形成を可能にした。デリバリ用ノズル貫通孔の一括形成手法を検討し、デュアル探針先端近傍のカンチレバー表面へ貫通孔を形成する適正条件を把握し、また、シリコンの薄型カンチレバー(5μm)内へ埋込構造の流路を形成して上面封止する形成プロセスをほぼ確立し、シングル構造のシリコン中空カンチレバーを試作した。低温熱酸化プロセスの際にシリコン探針が細り、今回の設計では探針内へのノズル貫通孔形成は困難であったが、デュアル中空カンチレバー形成に向けて要素技術をほぼ確立することができた。 試作した評価用MEMSカンチレバーを用い、薄膜で大きな磁歪が期待されるFe-40%Pd合金スパッタ膜への熱処理の効果を評価し、400~450℃での熱処理により磁歪効果が2~3倍に向上し、膜応力も緩和することを見出した。低磁束域(100 Gauss以下)でのカンチレバー変位の拡大を目指し、カンチレバー根元部へ付加する変位拡大機構についても新たに構造設計した。また、磁歪によるカンチレバーの共振変化を用いる高感度磁気センシングも新たに着想し、プロトタイプ素子を試作し、良好な磁気検出特性の見通しを得た。 液状試料の圧送機構を試作し、作製した中空プローブの液状試薬の吐出性能評価に取り組んだが、ダスト等による閉塞のために十分な評価には至らず、圧送によるカンチレバー変位への影響と安定性の評価は今後の検討課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに考案した鋭角のマスクパターン配置と低温熱酸化との組み合わせにより、先端曲率半径を数nm以下に先鋭化し、探針先端間を500nm以下に抑制した近接デュアル探針形成プロセスを確立することができた。また、デリバリ用ノズル貫通孔を探針近傍のカンチレバー上への一括形成手法およびシリコンの薄型カンチレバー(約5μm厚)内へ流路を作り込む形成条件を見出し、シングル型中空カンチレバーの試作を通じて、形成プロセスの要素技術はほぼ確立することができた。 磁歪薄膜アクチュエータについては、Fe-40%Pd合金スパッタ膜を400~450℃で熱処理することによって磁歪効果を2~3倍に向上できることを見出し、カンチレバー根元部の変位拡大機構の新規構図設計と併せ、低磁束域(100 Gauss以下)でのカンチレバー変位拡大の実現に近づいた。 以上のように、中空デュアルAFMプローブを実現するための要素技術は順調に確立された。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度に開発した、先鋭探針の近接形成、吐出ノズル形成、および埋め込み流路型中空カンチレバー形成の各要素技術を融合し、探針と一体化した吐出ノズルの設計と作製プロセスを最適化して、デュアル中空プローブの試作に取り組んでいく。 磁歪薄膜アクチュエータについては、変位拡大機構をデュアルカンチレバー切り替え機構に組み込んでいく予定である。また、熱処理した際のFePd薄膜中の結晶配向および下地層の効果についても詳細に評価を進め、さらなる磁歪効果の向上を探っていく。さらに、前年度に新規に構想した磁歪膜を用いた共振型磁気センサについても、評価を継続して高感度検出の可能性を検証していく。 圧送による液状試薬のデリバリ特性の基礎的な評価が課題であり、シングル構造およびデュアル構造の中空カンチレバーを再試作して流露およびノズルのデリバリ特性の検証に取り組んでいく予定である。
|