前年度までに開発した微小構造体の疲労試験システムの課題として、応力のみを計測し、試験片の微小なひずみは計測していないことがあげられる。これを解決するために、平成29年度は,力センサとは独立した変位センサを導入したシステムを開発した。これによって、微小構造体に荷重を加えたときの荷重とひずみの関係を精密に計測することが可能になった。また、応力振幅のピーク値を一定に保つように荷重をフィードバック制御するシステムを新たに構築し、変位制御と荷重制御の両方の疲労試験を実現した。 改良したシステムを用いて、微小試験体の疲労試験を試みた.試験片には,前年度までと同様に、材質はマグネシウム合金AZ31、寸法は2×3×20μmの試験体について疲労特性解明を行った.その結果,引張り強さにおいては,(1)マグネシウム合金AZ31 の引張荷重が底面すべりのシュミット因子に大きく依存すること,(2)微小試験片のひずみは,通常のサイズの試験片と比較して数倍大きい値を示すことを確認した。また、(3)底面すべりのシュミット因子が小さいとき試験片の破断進行が緩やかとなり,ひずみが大きくなることが予想される. 疲労強度については,(4)底面すべりのシュミット因子が高い試験片は,そうでない試験片やバルク材と比較してワンオーダー小さい回数で破断をしたため,疲労強度と結晶方位に依存性が存在する可能性が示唆された. さらに、システムの評価として、同様の試験を光学顕微鏡観察下と電子顕微鏡観察下との両方で行い、その成功率の違いから電子顕微鏡観察下におけるシステムの有用性を実証した。
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