本顕微分光システムの開発において、CTF(Contrast Transfer Function)値をさらに一段向上する必要があることが昨年度までの課題であった。引き続き、この点に特化して、同スペックの向上に取り組んできた。そのために、光学系全体における光軸や光学部品の中心位置をさらに高精度に位置決め・決定するために、レーザオートコリメータを組み込み・導入した。結果、入射光強度に応じた非線形CTFをさらに向上させることが可能となった。さらに照射励起光を多波長化したシステム構築に取り組み、ベクトリアル干渉計における各種収差の低減を広い波長領域でも行った。オートコリメータの導入により、多波長励起においても、収差を大幅に低減することに成功した。 また、等方性バックグラウンド領域からの散乱光プレスキャンにおいても、広い導入波長帯域において、ベクトル差分ゼロの条件をいかに機械的に決定することができるかがキーとなる同システムにおいて、大まかなラスタースキャンにより等方性領域をプレスキャンし、バックグランドバイアスを半自動的に取り除くことがさらに容易になった。その際、数百ナノメートルでのサンプル領域をスキャンするために、大まかなラスタースキャン用に三次元ピエゾステージを利用し、微小領域でのスキャン用にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを併用するシステムを開発し、この機構をさらに高精度することに取り組んだ。光源のコヒーレンスの良さが逆にベクトリアル干渉のゼロサプレス効果に悪影響を及ぼしてしまうことが判明していたため、コヒーレンスの低いLDレーザ光源を用いて差分ベクトルゼロ推定も実施した。ところが逆に、MEMSミラーによって拡大ラスタースキャンを実施するためには、スキャンによる光学距離の僅かな変化が差分信号に大きく影響してしまうことも判明した。
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