研究課題/領域番号 |
15H03946
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
橋口 原 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (70314903)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エレクトレット / MEMS / カリウムイオン / 帯電寿命 |
研究実績の概要 |
本研究は、独自に開発したカリウムイオンエレクトレット法の帯電特性の信頼性を明らかにすることを目的としている。今年度は、昨年度効果が確認されたパリレン膜の耐湿特性の再現実験を85℃80%Rhの条件で実施したが、バラツキが大きくその原因についてまず検討した。パリレン膜に原因があるのか、あるいは元々のカリウムイオンエレクトレット膜にバラツキがあるのか調べるために、保護膜なしの耐湿特性を測定した。帯電は通常真空中で行っているが、帯電時の真空の質について確認するために、四重極質量分析計(Q-MASS)を真空プローバーに取り付け、質量数50までの状態をモニターした。その結果サンプルをチャンバー内に導入後、特に水分を示すピークが導入時に対して十分小さくなるまでヒーター加熱をしながら真空引きし、その後帯電処理を行ったものでは、帯電の均一性、帯電の劣化寿命特性が著しく改善することが判明した。さらに比較のために、大気中で帯電処理を行ったサンプルを作成しその劣化を観察したが、このサンプルでは帯電電位が急激に劣化してしまうことが分かった。これらの実験から、帯電時の環境が劣化特性に大きく影響していることが示唆された。また帯電後のカリウムの移動を抑制する手段として、リンガラスをカリウムイオンエレクトレット膜に導入した。昨年度作製した試験用櫛歯アクチュエータで帯電寿命特性を評価したところ、リンガラスを導入していないものに比べ、帯電劣化寿命が大幅に伸びる結果が得られた。また、エレクトレットによる実用デバイスとしてマイクロフォンを試作し、マイクロフォンとして動作するところまで確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はマイクロフォンの試作を行うところまでが目標であったが、詳細な評価はまだ行っていないものの、実際にマイクロフォンを試作し、カリウムイオンエレクトレット膜を形成した対向電極によってその動作を確認するとこまでは達成できた。今年度は寿命特性が保護膜に主に起因しているのか、あるいはもともとのエレクトレット膜の特性によるものなのかという問題について実験を重ね、帯電時の真空の質が帯電特性に影響を与えていることを見出した。想定外ではあるが大きな進捗であると考えている。今後再度パリレンやAl2O3膜の耐湿特性を取ることで、信頼性の高い寿命特性が得られることが期待できる。本研究はあと1年であるが、目標として明らかにすべき項目について、概ね結論が得られる見通しがたった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、作製したエレクトレットマイクロフォンの特性を評価し、高温高湿加速試験を実施して、カリウムイオンエレクトレット膜の信頼性を実デバイスで評価する。湿度一定で温度の関数及び温度一定で湿度の関数の帯電電圧劣化特性を測定する。このとき、初期帯電条件を一定にするため、Q-MASSによる真空の質をモニターして帯電を実施する。最終的にアレニウスプロットを作製し、カリウムイオンエレクトレット膜の信頼性データとして公表する。
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