本研究では,電力系統の安定運用に責任を持つ送配電事業者(上位層),多数分散して存在するヒートポンプ/コージェネレーションシステム(HP/CGSシステム)を統括するアグリゲータ(中位層),HP/CGSシステム所有者(下位層)からなる3階層の経済主体を想定し,それらが相互に協調しながら再生可能エネルギー(RE)電源出力のランプ変動を抑制するための制御・運用手法を開発してきている.本年度は,より実際的な運用を考慮して手法の改良を行うと共に,提案システムの導入によって再生可能エネルギー電源の導入可能性がどの程度拡大するかを定量的に評価した.具体的には,以下の項目について研究を実施した. (1)RE電源のランプ変動予測誤差に伴う制御要求量の修正:上位層レベルにおける,HP/CGSシステムが担うべき制御要求量は,前日のRE電源の出力予測値に基づいて決定する必要がある.しかしながら,前日予測値には必然的に誤差が含まれるため,当日の運用においてはRE電源の最新の出力予測情報をオンラインで収集し,前日に求めた目標値を適切に修正していく必要がある.そこで,修正に伴う中位層,下位層の運用制御手法を開発した.また,予測誤差に対してロバストな制御要求量及び制御目標値の決定手法についても検討した. (2)RE電源の導入拡大量の評価:将来的なコージェネレーションの導入量推定に基づき,HP/CGSシステムによる電力系統全体の調整力増大量を算定し,それに伴ってRE電源の導入可能量がどの程度拡大するかを定量的に評価した.
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